高さ日本一となる地上300m、60階建ての超高層複合ビル「あべのハルカス」。2014年3月の全館オープンに先駆けて13年6月、地下2階から地上14階までの低層部に百貨店「あべのハルカス近鉄本店タワー館」がオープンした。開業1週間で従来の2倍以上となる1日平均10万人超が訪れた。
あべのハルカスは近鉄の大阪阿部野橋駅に直結。JR天王寺駅にも近い。キタとミナミに続く大阪第3のターミナルであるアベノの立地を生かして、商圏の拡大を目指す。
近畿日本鉄道が開発を手掛けて、竹中工務店が設計と施工を担った。現在は、中層部に入るオフィスや高層部に入るホテルの内装工事が急ピッチで進んでいる。14年3月にはこれらに加えて、最上部の58~60階に展望台「ハルカス300」、16階に「あべのハルカス美術館」もそれぞれ開業する。
あべのハルカスは、街の多様な機能を垂直に積み上げた“立体都市”だ。ビルの高さと複合する用途を生かした省エネ技術が人々の活動を支えている。
ビルは低層部の百貨店、中層部のオフィス、高層部のホテルという各用途に応じて外観を区切り、北面が階段状にセットバックしている。エレベーターを軸に、各用途のフロアの奥行きを最適化した結果だ。セットバックする際、建物内に隙間を設けて「ボイド」と呼ぶ吹き抜け空間をつくり出した。
ボイドは採光や換気の役割を果たす。例えば、春や秋はボイドを通して快適な外気をビル内に導く。人の熱などで暖められた空気は軽くなって上昇する原理を利用して、自然換気を実施する。高低差のあるボイドほど上下の圧力差が大きくなるので、効率良く換気ができる。超高層ビルにはうってつけのシステムだ。夜間は冷たい外気を取り込んで、翌日の空調負荷を抑える。
さらに、生ごみなどからメタンを主成分とするバイオガスを生成して、発電や給湯の燃料として利用する仕組みを国内の高層ビルに初めて導入した。生ごみは百貨店やホテルのレストランから出たものだ。エネルギーの創出と同時に、ごみの排出量を抑える効果もある。
用途の違いを利用した省エネにも取り組む。例えば、多くの人が集まる百貨店は、年間を通して冷房が必要となる。冷房する際の排熱をホテルの客室の給湯などに利用する。
百貨店は休日、オフィスは平日の昼間、ホテルは夜間に多くのエネルギーを消費する。こうした時間差を利用して、用途間でエネルギーを融通。ビル全体でエネルギーの負荷を平準化する。
商業施設やホテルを含む複合ビルは通常、オフィスだけの一般的なビルよりも床面積当たりのエネルギー消費量が大きくなる。あべのハルカスは、用途の違いを逆手にとって様々な省エネ技術を駆使。ビル全体の二酸化炭素排出量を年間で5000t減らす目標を掲げている。一般的なビルと比べて25%削減する水準だ。