日経コンストラクションの読者投稿欄「ねっとわーく」には毎号、土木技術者を中心とする読者から熱い内容の投稿が寄せられている。土木界に対して体質の古さを憂い、変革を叫ぶ声もあれば、逆に変わろうとしていることに疑念を表明し、現状維持や伝統への回帰を主張する声もある。

“官尊民卑”の改善を求める声

 土木工事の大半は公共工事で、“官”が発注し“民”が受注する構図となる。日本に根強く残る“官尊民卑”の体質は土木界にも影を落としている。

いつまで続く官庁の“黒子扱い”

 建設コンサルタントという業種があまりにも一般に知られていないことを、日々痛感している。建設業界と無関係の親戚や知人に「仕事は何をしているか」と聞かれるたびに、説明に苦労する。(中略)

 官庁との関係で納得できないのは、建設コンサルタント会社に対する“黒子扱い”の度が過ぎる担当者も存在することだ。同業他社の知人と会うと、よく話題になる。ミスがなく質の高い仕事をした民間の技術者には、相応の敬意を払うべきではないのか。

 官庁の技術者のなかには、建設コンサルタント会社に発注した調査の結果を自ら調査したかのように発表したり、共同研究の成果を論文にまとめる際に自分の名前しか載せなかったりする人もいる。「民間の技術者の名前で調査結果などを出すと信頼性が落ちる」とでも考えているのだろうか。

 しかし、建設コンサルタント会社の技術者が土木施設の整備や防災などで不可欠の役割を担っていることは、発注者として接する彼らこそが一番知っているはずだ。まずは官庁がこの業種の存在と重要性を市民に隠さず伝えてほしい。そのことこそが、業界の知名度向上に対する強い追い風になると考える。

(37歳、建設コンサルタント会社社員/2013年7月8日号から)

ソフト路線への異論

 多くの大学や高等学校の土木系学科は、「土木工学科」や「土木科」といった伝統的な名称を捨て、代わりに「都市」や「環境」などの言葉を含む学科名を掲げている。背景には少子化の進行がある。若くて優秀な人材を確保するには、イメージも大切だからだ。そのため、企業の広報活動や新人教育では、いわゆる3K(汚い、きつい、危険)のイメージを払拭しようと、広報活動や新人教育でソフト路線を打ち出す動きが目立つ。

 しかし、そのような動きに異論を投げ掛ける読者もいる。

過剰な優しさは若手をダメに

 (前略)当社は毎年、新卒を採用している。若い人材に対しては会社説明会で仕事の大変さを隠さずに説明するだけでなく、入社後も甘やかすことなく鍛えるのがよいと考えている。

 少子化が進み、土木業界の就職人気が振るわない状況下で、建設会社は、会社説明会や新人教育で「優しさ」や「楽をさせること」を重視してしまいがちだ。優しくされてこそ伸びる若手もいるかもしれないが、重要な仕事を任せられない甘ったれた社員に育ってしまう恐れもある。

 北国を活動の場とする当社にとって、建設現場は厳しい自然環境や災害に対応しながら利益を上げる最前線にほかならない。元請け会社の我々が未熟さや不注意で間違いを犯せば、影響が及ぶのは工事の品質や採算性だけではない。事故でも起こしたら、下請けの技術者や技能者の人命を危険にさらし、近隣住民にも迷惑を掛ける。建設現場に本来、甘さというものは許されないことを、若手社員に早くから教えていくべきだと強く思う。

(40歳、建設会社社員/13年9月9日号から)

 変革を求める声、変えない大切さを訴える声、いずれにも一理ある。土木界の展望を明るくするために、こうしたことを考える姿勢は貴重だ。実際に多くの土木技術者は、将来の土木界の在り方を真剣に考え、それまでの仕事や取り巻く環境などについて「このままでよいのか、いけないのか」と思い悩んでいるのではないだろうか。

 日経コンストラクションは建設実務者を対象に、土木界の変革に関して率直な声を聞くアンケートを2013年10月11日まで実施している。(回答はこちらから)

 寄せられた回答やその集計結果は、日経コンストラクションが企画中の土木界の変革に関する記事で紹介する予定だ。

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