Smart City Week 2012でブースを構えるパナソニック。通路側のステージでは、同社のスマートタウンに関する取り組みを紹介していた(写真:日経ホームビルダー)
Smart City Week 2012でブースを構えるパナソニック。通路側のステージでは、同社のスマートタウンに関する取り組みを紹介していた(写真:日経ホームビルダー)

 スマートタウンの街びらきやスマートタウンの分譲計画の発表など、賢い、スマートな街づくりを巡る動きが活発になっている。スマートな街とは、いったいどのような街づくりになるのだろうか。そして、その街づくりには、地元密着型の工務店などが参画するチャンスはあるのだろうか…。そのヒントを、10月31日から11月2日までパシフィコ横浜(横浜市)で開催されたSmart City Week 2012の会場で見付けた。展示内容から、スマートタウンの未来像を探ってみた。

 次々と報道発表が行われるスマートタウンは、現時点では大きく2種類に分類できる。電機メーカーやIT系企業が旗振り役となるタイプと、大手ハウスメーカーなどが推進するタイプだ。Smart City Week 2012の展示でも、この2タイプを代表するとも言える企業が出展していた。電機メーカー系スマートタウンはパナソニック、ハウスメーカー系スマートタウンは積水ハウスである。

“仕様”といった見えない城壁で囲む

 パナソニックは、同社が神奈川県藤沢市で進めているプロジェクト「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)構想」の概要を展示していた。約6万坪の敷地に、住宅が約1000戸。商業施設や公益施設も備えた大規模な街の構想だ。総事業費は約600億円。2014年春の街びらきを予定している。

 展示の説明を聞いていて、電機メーカー系のスマートタウンには次のような特徴があることに気が付いた。それは、街づくりのコンセプトとして、CO2削減など環境に配慮した街づくりの他に、IT技術などを活用して街に住む人たちに付加サービスを提供することに重点が置かれているというものだ。具体的なスマートタウンの展示などはなかったものの、日立製作所や東芝のブースでも、IT技術を活用して街の暮らしを便利にする提案が示されていた。

 このようなケースでは、より多くの人にサービスを提供することが重要になるため、住まい手の選択肢を狭めるような物理的な制限、例えば住宅会社を限定するといった囲い込みはしにくい。どちらかと言えば、コンセプトを満たせる仕様で制限を付けるといった緩やかな囲い込みにとどめている。「仕様という見えない城壁で囲む街」というイメージから、ポリス型スマートタウンと名付けておこう。

 ポリス型スマートタウンの特徴をFujisawa SSTのケースで見てみよう。まず、街づくりのために設けたガイドラインがある。CO2は70%削減(戸建て住宅はCO2±0)、生活用水は30%削減するといった環境目標の他、再生エネルギー利用率は30%以上といった具体的な数値を示した。さらに、電気バイクなどを活用するモビリティ、安心・安全な暮らしを提供するためのセキュリティ、健康に配慮したヘルスケアといった住人の暮らしをサポートする提案を掲げている。これらの街づくりを実現するために、条件を満たす建物や設備を設計し、IT技術でインフラを整備するといった流れだ。戸建て住宅の場合は、パナソニックのHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)である「スマートHEMS」を導入し、ネットワーク化し、スマートタウンの一員とする。

パナソニックのブース内展示。Fujisawaサスティナブル・スマートタウン構想の概要を紹介していた(写真:日経ホームビルダー)
パナソニックのブース内展示。Fujisawaサスティナブル・スマートタウン構想の概要を紹介していた(写真:日経ホームビルダー)

ガイドライン準拠で家を建てる

 Fujisawa SSTのような大規模な街づくりの構想になると、とても地元密着型の工務店が参画する隙もないように思ってしまうだろう。だが、そんなこともないようだ。

 パナソニックの展示ブースで説明を担当していた、まるごとソリューションズ本部プロジェクト推進グループ藤沢SST推進チーム参事の上田晶子さんに、住宅会社が参加できる可能性について質問をぶつけてみた。すると、詳細は検討中なので断言はできないとしつつ、「Fujisawa SSTで戸建て住宅を建てる住宅会社を1社に限定しているわけではない」といった答えが返ってきた。どうやら、Fujisawa SSTのガイドラインなどに従った住宅が建てられるのであれば、地元の工務店であっても参画できるチャンスはありそうだ。

 ただ、すぐに参画可能というわけではない。Fujisawa SSTにおける住宅の分譲開始第1期ではプロジェクト参加企業として名を連ねているパナホームなどが戸建て住宅を建築する予定だ。可能性があるとしたら、第2期以降だろう。パナホームとの競合性などを考慮したうえで他の住宅会社が参画できるかどうか判断されることになりそうだ。