2009年にイタリア中部のラクイラで発生した地震をめぐって10月22日、伊政府の委員会メンバーだった7人の地震研究者らに下された禁錮6年の実刑判決。日本地震学会の加藤照之会長は29日、研究者が地震被害の結果責任を問われることに対して「強い懸念を感じる」と、判決を批判する声明を出した。加藤会長の言い分はおおむね理解できるが、研究者の覚悟が文面からは伝わってこない。

イタリア中部地震をめぐる地震研究者らの実刑判決に対して、日本地震学会の加藤照之会長が出した声明(資料:日本地震学会)
イタリア中部地震をめぐる地震研究者らの実刑判決に対して、日本地震学会の加藤照之会長が出した声明(資料:日本地震学会)

 この地震は09年4月6日、イタリア中部のラクイラ市付近で発生したマグニチュード6.3の地震。死者は300人以上に上った。建築物や土木構造物の被害状況は、ケンプラッツの過去の記事で詳しく報じている。

「特異な地盤、顕著な建築被害」、イタリア中部地震で学会報告

イタリア中部地震、小規模な落橋など土木被害は限定的

 判決の詳細は公表されていないが、報道によれば実刑の理由は地震予知の失敗ではなく、4月6日の地震の前に伊政府委員会が出した「安全宣言」が不適切だったからとされる。本震に先立ち、ラクイラでは1月ごろから小規模な群発地震が断続的に続いていた。伊政府委員会では大地震発生のリスクも議論していたが、住民のパニックを防ぐために「安全宣言」を出した。

 問題は、研究者が「判断」にどこまで関与するかだ。理想論で言えば、研究者が観測・調査と分析を担い、行政・政治の側が判断を下す。しかし、専門家ではない行政・政治の責任者は、客観的なデータを並べられても判断できないのが現実だ。研究者の「見解」が実質的に判断となる。