シャープの掃除ロボット「ココロボ」(写真:日経ホームビルダー)
シャープの掃除ロボット「ココロボ」(写真:日経ホームビルダー)

 5月8日、シャープが発表した掃除ロボット「ココロボ」に様々な反応があった。「かわいい」「しゃべる機能は必要ないのでは?」――。読者の方々はどのような感想を持っただろうか。

 ロボット好きな筆者としては、「ちょっとイイかも」と言うのが正直な感想だ。実は我が家には米アイロボット製のロボット掃除機「ルンバ」がある。しかも初代。掃除するために動き回るルンバの仕草がかわいいと感じていただけに、シャープのココロボがしゃべる姿にも少し心が揺らいでしまった。

掃除ロボとHEMSがつながる

 そんな掃除ロボットをなぜスマートハウスの標準装備と筆者は感じたのか――。そのヒントはシャープの記者発表会の場にあった。

 一つは、ココロボが持つ機能拡張性だ。現時点では実現できていないが、ソフトウエアやハードウエアの拡張で、エアコンやテレビなどのコントロールもココロボから可能になるとシャープは説明する。通信方式については考慮から外すが、無線コントロールできるものであれば、家電製品だけでなく照明器具といった住宅設備も制御の対象となり得るわけだ。

 ここにスマートハウスとの接点がある。スマートハウスを構成する仕組みの一つHEMS(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)では、電気や水道、ガスなどの使用量を始め、太陽光発電システムなどの発電量、室内外の温度など様々なデータを収集・蓄積・分析する機能が考えられている。将来的には、これらのデータを基に機器を制御する仕組みも組み込まれ、家電を含めた住宅内の様々な設備機器が制御されるようになる。

 このHEMSが家電や設備を制御するための中継機器として、掃除ロボットを活用してはどうだろうか。もちろん、制御を中継するだけでは「なにもロボットにしなくても…」という声もあるだろう。そこで注目したいのが、もう一つのキーワード、音声でのコミュニケーション機能だ。

 シャープのココロボは、簡単なやり取りではあるが住まい手と音声でコミュニケーションができる。「きれいにして」と住まい手がココロボに声を掛けると、「わかった」とココロボが返答して掃除を始めるといった具合だ。この音声認識機能を応用して掃除以外の制御についても指示できるようになれば、スマートハウスの対話式コントローラーとしても活用可能だ。

 現在のスマートハウスでは、HEMSの表示デバイスとしてテレビや専用のモニター、パソコン、iPadのようなタブレットPCが主に使われている。この役目の一部を、掃除ロボットに代わってもらうという発想である。HEMSの情報をロボットが音声で伝え、その情報に対して住まい手が音声でコマンドを伝えるという未来図だ。

 例えば、「ご主人様、室外の気温がだいぶ下がってきました。室内のエアコンを停止して、外気を取り込みましょうか?」と掃除ロボット。「OK。よろしく」と住まい手が答えると「了解しました。エアコンを停止して、窓を開けます」と掃除ロボットが家電や設備に指示を送る――。こんな感じだ。

住宅と人とのインターフェースに

 スマートハウスの登場で住宅内の家電や設備がネットワーク化されれば、住宅のあらゆるものがロボットにもつながる未来が来そうだ。住宅と人とのインターフェースとして、ロボットが活躍するという将来像があっても良い。

 実はこのようなスマートハウスでのロボット活用について、LIXIL住宅研究所が2011年10月に発表していた。NECが開発したロボット「パペロ」を使い、住宅内に設置した各種センサーと連動させるというもの。例えば、天候に合わせて窓の開閉を指示したり、照明やエアコンの制御をしたりといったことが考えられていた。

 シャープのココロボは、この考え方をさらに進めるきっかけになり得る。単なるロボットでは住宅内に存在する意義を見だしにくいが、掃除をするという機能があれば存在する必然性も高まる。一家に一台、いや、一部屋に一台、掃除ロボットが部屋を掃除しながら住まい手をアシストする。住宅と人とのインターフェースとして成立するはずだ。

 家に帰るとリビングで待つロボット。「ご主人様、留守中の訪問者は3人でした。電話は2件。留守番電話を再生しますか?それと、本日の太陽光発電システムでの発電量は少なめでした。蓄電池の残量も少ないので夜間の電気使用は抑え気味がお薦めです」――。こんな妄想はどこまでが笑い話となるのか、未来の住まいの姿が楽しみだ。