下のグラフは、東日本大震災直前の時点で住み替えやリフォームを計画していた顧客500人にアンケート調査した結果だ。震災後に採用したくなった設備や仕様を尋ねたところ、1位はダントツで太陽光発電システム、そして2位にLED照明、3位に制震・免震システムが続いた。
東日本大震災は、東京電力福島第1原子力発電所の甚大な事故を引き起こした。同福島第2と東北電力女川原発も地震で停止、中部電力浜岡原発は菅直人首相の要請を受け入れて運転をやめた。
現在の日本は、燃料供給や価格安定性に優れた原子力発電を電力供給のベースとしている(下図参照)。今回の震災に伴う原発の停止は、被災地のみならず、地震による直接の被害が少なかった広範な地域も“電力不安”に陥れた。電力供給量が大幅に不足する今夏に向けて、政府は東京電力と東北電力の管内で15%の電力削減を目指している。浜岡原発を全面停止した中部電力も管内の企業や家庭に節電を呼び掛けている。
電力不安に対する自衛策として、電気を自給できる太陽光発電システムにがぜん注目が集まるのは当然だろう。LED照明や高気密・高断熱仕様、風力発電なども、限られたエネルギーを効率よく使って快適に生活するためには欠かせないアイテムだ。
4位にはオール電化が入った。災害時は電気だけでなくガスも使えなくなる。最近のガス設備機器は電気がなければ使えないものも多い。さらにインフラ設備の構造上、電気は復旧が早いことから、電気のほうがガスよりも災害リスクは低いと考える人もいるようだ。
ただ、熱源を電気のみに頼る状況を不安視する声は、工務店や設計事務所などの住宅供給者、建て主ともに聞こえてくる。また、震災後の電力不安に対するマイナスイメージから、「オール電化=悪」の図式がわかりやすく、なんとなくオール電化を採用しにくい雰囲気になっているようにも感じる。
大容量の供給電力を担う原発は今、存続が岐路に立たされている。原発の停止が長引いてベース電力の少ない状態が続けば、余剰電力を安価に売っていた深夜電力割引はいずれ見直されるかもしれない。そうなるとオール電化のお得感が色あせ、採用するメリットは見出しにくくなる。
これらを考えると、オール電化への逆風はこれからが本番だと思う。国策として原発を推進し続けるのか、あるいは原発の代替として太陽光や風力など自然エネルギーの発電比率を一気に引き上げるのか――。日本のエネルギー政策がはっきりするまでは、家づくりを手がける工務店や設計事務所は熱源選択の舵取りが難しくなりそうだ。