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目次/第1部 阪神大震災の全容 被災マップ 12 0 [無料PDF]
第1部 阪神大震災の全容 第1章(1) 被災の実像〈建築〉I 14 本体190円+税
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第1部 阪神大震災の全容 第1章(2) 被災の実像〈建築〉II 8 本体95円+税
第1部 阪神大震災の全容 第1章(3) 被災の実像〈建築〉III 10 本体190円+税
第1部 阪神大震災の全容 第1章(4) 被災の実像〈土木〉 16 本体190円+税
第1部 阪神大震災の全容 第2章(1) 解説I 23 本体381円+税
第1部 阪神大震災の全容 第2章(2) 解説II 9 本体95円+税
第1部 阪神大震災の全容 第3章 ルポ 31 本体476円+税
第2部 シミュレーション●東京が震える日 第1章 「その日」まで 9 本体95円+税
第2部 シミュレーション●東京が震える日 第2章(1)  「その日」の東京I 14 本体190円+税
第2部 シミュレーション●東京が震える日 第2章(2)  「その日」の東京II 12 本体190円+税
第2部 シミュレーション●東京が震える日 第3章 「その後」 9 本体95円+税
第3部 「都市と建物」を守る提言 16 本体286円+税
防災ミニ知識/おくづけ 15 本体190円+税

 このコンテンツは、1995年に発行した日経アーキテクチュアの書籍「阪神大震災の教訓」を、パートごとに分けてPDFファイルで復刻したものです(ケンプラッツ・デジタルライブラリー)。「第1部 阪神大震災の全容 第2章 解説」の抜粋をこのページの末尾に掲載しています。

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阪神大震災の教訓
阪神大震災の教訓

編集:日経アーキテクチュア
体裁:200ページ
ISBN:4-8222-0411-1
発行日:1995年3月30日

※紙の書籍としては販売を終了しています。


第1部 阪神大震災の全容 第2章 解説

五つの特徴

1:地震動
加速度、速度とも記録的な数値

 観測された地震動は、最大加速度が水平で833ガル、上下で最大507ガル。観測記録を基に算出された最大速度が水平で104カイン、最大変位は27cmとなっている。速度応答スペクトルを見ても、周期1秒前後の応答は250カインに達している。水平動の大きさもさることながら、上下動が大きかったことが特徴だ。記録の中には、水平加速度よりも上下加速度の方が大きな値を示したものもある。

 振動時間は水平動、上下動とも10から15秒程度と短く、ほぼ同時に観測されている。瞬間的に大きな力が加わったと言える。被災者の体験談でも、 突き上げるような縦揺れとほぼ同時に大きな横揺れを感じたという声が多い。

 マグニチュードは7.2、地震の規模そのものは極端に大きかったわけではない。ただ、震源が20kmと浅く、しかも直近に高密な大都市が存在していたことが被害を大きくした。都市直下型地震の恐ろしさを見せつけた形だ。

2:被害地域
列島状に連なる被害集中地域

 マクロに見れば、六甲の山並みの南側、海岸線にほぼ平行して幅1から2km、東は西宮市、宝塚市から、西は神戸市長田区辺りまで長さ30kmほどの地域において、特に激しい被害が多く見られる。

 だが、詳細に被害分布を見ていくと、例えば木造被害の場合、必ずしも被害の激しい地域が連続しているわけではない。日本建築学会でも、非常に被害が激しいところと比較的被害率が低いところがあり、高いパーセンテージで特定の地域に被害が集中しているのが大きな特徴、と報告されている。気象庁も被害分布を追認する形で、列島状の震度7認定地域を発表した。

 沖積層の堆積厚の違いによって揺れが増幅するなど、地盤性状によって被害が分かれたとする説や、活断層との関係と見る説など、いくつかの可能性が挙げられており、現在専門家による分析が進行中だ。

3:鉄筋コンクリート(RC)造
中間層崩壊の多発に注目集まる

 これまで日本の地震では見られなかった新しい被害として、RC造中高層建物の中間層の崩壊の多発が注目されている。建物の保有せん断力と実際の地震の応答せん断力の分布のずれが要因と見る向きが多いが、その他の可能性も取りざたされている。

 また、これまでも多く見られたものだが、ピロティ形式を中心とする1階部分に被害を受けた建物が今回も多かった。全般的には、71年の建築基準法施行令改正以前の旧基準による建物の被害が大きいことが、日本建築学会をはじめとする様々な調査で明らかになっている。

 施工面では、端部定着の不備や主筋ガス圧接部の破断など、施工不良による被害が報告されている。端部定着については、現行基準でも不十分で、見直しが必要という。現段階では目視調査が中心なので、材料面の指摘は少ないが、明らかに粗悪なコンクリートによる施工も見つかっている。

4:鉄骨(S)造
欠陥溶接が被害を拡大

 S造においても、大きな被害を受けているのは、築20から30年程度の古いものが多く、基準の新しいものほど被害が小さいのはRC造と同様の傾向である。ただし、新日本建築家協会(JIA)の調査では、新基準であっても30%以上の建物で補修困難なものがあることが分かっている。

 被害の大きい建物のほとんどで溶接不良が見つかっており、年代の新旧を問わず、溶接部の管理の重要性が浮き彫りになった。接合部の設計のまずさも指摘されている。軽量形鋼を使った建物では、鉄骨の腐食が進んでいたケースも多かった。アンカーボルトの破断など、柱脚部の破壊による転倒などの事例も数多い。

 新しいタイプの被害としては、芦屋浜高層住宅で起きた極厚鉄骨柱のぜい性破断がある。

5:木造
老朽家屋が瞬時に倒壊

 5000人を超える死者の死因で、圧死が89%を占める。多くは戦前から戦後に建てられた、築後30年以上の古い瓦葺きの木造家屋の下敷きによるものだ。

 これらは、瓦を葺き土で固定していたため屋根が重いこと、筋かいがなく外壁も剥落してしまい水平抵抗力が小さかったこと、材が腐食するなど老朽化によって耐力が低下していたこと、などが倒壊の主な原因と見られている。

 一方で、在来工法でも建設年代の比較的新しいものや、プレハブや2X4などの工法による建物は、小被害にとどまっている。ただし新しくても、一面に大きな開口部をとるなど壁配置の偏りや、筋かい端部の留め付けの不備などにより倒壊している例が複数ある。また、基礎部の接合不十分による転倒などの事例も報告されている。