中部電力は、想定・東海地震、東南海地震、南海地震が3連動する場合、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)における想定・津波高を8m程度としてきた。しかし、その一方で、「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究プロジェクト」が、すでに、「3つの地震が数分~数十分の時間差を置いて連動発生した場合には、浜岡原発付近の想定・津波高が11m程度に達する」という研究結果を公表していた事実が明らかになった。

 話が込み入っているので、順を追って説明する。

 静岡県は4月6日、「福島第一原子力発電所の事故を踏まえた浜岡原子力発電所の津波対策等」をテーマに、「静岡県防災・原子力学術会議」の臨時会を開催した。

 その席上、中部電力が作成した「東北地方太平洋沖地震を踏まえた 浜岡原子力発電所の対応について」が配布された。

 この中で津波の高さを、「原子炉設置許可に記載されている津波の水位は6m」(10ページ)、「東海・東南海・南海3連動の1707年宝永地震津波を踏まえても、1854年安政東海地震津波(痕跡高、約6m)が、敷地に最も影響を与えたと考えられる」(13ページ)と分析。不確かさを考慮した数値シミュレーションを実施し、「津波高さを8m程度とする」と結論付けた。

 そして、海と浜岡原発の間には、高さ10~15m、幅60~80mの砂丘があるため、「砂丘が津波を防護する機能を有している」(15ページ)と主張した。

川勝知事は中部電力の想定に納得していない

 この臨時会について、4月7日付の静岡新聞ニュースは、「県学術会議、津波想定の甘さ指摘 中電に安全徹底求める」と題する記事で、次のように報じた。

「想定を超える巨大地震に伴う津波の大きさを計算で求め、対策に生かす必要性も指摘された」

「川勝知事は終了後、『本県の津波対策は過去の記録に基づいている。(想定外の)巨大地震が起きた時、本県ではどのような津波が起きるのか計算してハード、ソフト両面の対策に生かす必要がある』と語った」

 要するに、川勝平太・静岡県知事は、津波高を8mとする中部電力の想定に、納得していなかったことになる。