「考える人」の存在感が増す

 さて、改正案が施行されると、建設会社や設計事務所には、どのような資質が求められるのだろうか。当然のことながら、事業性を見抜く力と、実施後の運営力が大切になる。不動産事業を考えれば分かりやすい。基本となるのは収入と費用だ。

 収入を算出するには、利用者数や利用回数、料金を見積もらなければならない。一定の事業期間のなかで、「利用者数×料金」が最大となるような設定が重要だ。料金が高すぎれば利用者は現れず、安過ぎれば採算が厳しくなる。収益性を保つには、利用者のニーズをしっかりと把握しなければならない。ニーズに影響を及ぼす社会や環境の変化も予測する必要がある。人口、競合施設の動向、気候の影響などを調べなければならない。

 費用についても同様だ。施設の維持や運営にいくらかかるのかを正確に把握しなければ、収支計画が狂う。災害リスクも加味すべきだろう。利用者の安全を確保しながら、費用を抑えることが求められる。ある程度の快適性も必要だ。サービスが低下すれば、利用者が減って収入も減る。

 従来のような公共工事の設計受託や工事受注ならば、予測が外れても決められた報酬を得ることができた。ところが独立採算型のPFI事業では、収入を過大評価したり費用を過小評価したりすると、事業の存続自体が危うくなる。

 独立採算型のPFIは、請負で成り立ってきた会社にはハードルの高い仕事だ。半面、創意工夫とチャレンジ精神に富む会社にはチャンスをもたらす。

 身近なところでは、公共の所有する土地や施設の活用があるだろう。収益を生み出す器とする提案力を備えれば、得意の設計や施工の技を生かせる。事業運営や資金調達が苦手なら、不動産会社や金融機関、商社などと連携する手もある。「考える人」や「交渉できる人」の存在感が間違いなく増してくる。