官民連携ビジネスが、徐々に活発になる気配だ。自治体のなかで先進的に取り組んでいると評価される神奈川県藤沢市は9月末、民間からの事業提案の採択結果を発表した。採択された提案を筆者なりの視点で整理してみると・・・

▼応募46件のうち「条件付き」も含めて23件を採択(16件が採択、7件が条件付き採択)。
▼採択23件のうち建設・不動産分野に関連する提案が17件(7割強)。
▼採択23件のうち建設や建て替え、施設整備などを伴う提案が10件。
▼採択23件のうち包括管理や維持管理などのアセットマネジメント系の提案が8件。
▼道路や橋梁などの土木施設を対象とした採択4件はアセットマネジメント系の提案が主体。

 なかには維持・管理と新設・整備をまとめて、包括委託を求めた提案がある。設計・施工一貫方式での施設再整備を提案したのは、おそらく建設会社だろう。審査結果の概要は公表されているので、後に続く自治体の提案募集では、このレベルが出発点になる。今後は、自治体がうなずくもう一歩先の提案をしなければ、優位には立てないだろう。

 一方、市役所業務の包括的な民間委託の方針を打ち出している兵庫県加西市は、委託先募集に当たって企業と対面方式の対話(「競争的対話」と呼んでいる)を実施。9月に対話に参加した54社の社名を公表した。大成建設、前田建設工業、国際航業、オリエンタルコンサルタンツなどの名前がある。市は対話を実施した企業を中心に意見交換を続け、来春をめどに包括的業務委託の基本的実施方針を作成する計画だ。

 ところで、民間に質の高い提案を求めるなら、提案する気を促すインセンティブ(報奨や動機付け)が不可欠だ。10月19日に東京大学で開催されたフォーラム「不動産証券化の明日を拓く」で講演した三井不動産の岩沙弘道社長は、「不動産証券化は、財政再建やインフラ整備にも有用な手法だ」と発言。官民連携推進策の一つとして「価値あるアイデアを提供した者に相応のメリットを与えること」を挙げ、「この部分は残念ながら今、極めて乏しいと言わざるを得ない」と指摘した。

 ほとんどの民間企業は、仕事を得ることを期待して提案したり、対話に参加したりしている。従って、この期待に応えるインセンティブが示せるかどうかが国や自治体にとっての課題だ。