提案を尊重する藤沢市の基本方針

 先の藤沢市の取り組みでは、事業化提案の募集に先立ち、「公民連携の基本方針」をまとめた。そこでは、「インセンティブの付与」という項目を設け、以下の文言を掲げている。
 
▼アイデア提案に基づいて事業を公募する場合にあっては、アイデア募集への参加を資格要件とすることができるものとします。
▼アイデア募集の評価結果に従って、事業公募の総合評価値に加点することができる手法についても、必要に応じて採用することができるものとします。
▼審査後の提案事業者との契約形態についても、例えば初年度については随意契約を可能とするなど、提案者にとってのインセンティブを付与する手法を採用します。

 国土交通省・成長戦略会議の委員を務めた野村総合研究所の福田隆之氏は、ケンプラッツに連載した「PFI・PPP市場拡大のインパクト(6)韓国の知見」のなかで、日本のPFI法に相当する韓国の法律(PPI法)について触れ、次のように紹介している。

 「PPI法の施行令には、民間からの提案に一定の期限を区切って対応するよう政府に義務付ける規定がある。また、民間からの提案が採択された場合の審査プロセスや、提案を行った企業に対してライバルの提案が出てきた場合の最初の提案者への優遇も規定されている。これによって、政府では発見できない事業ニーズを民間企業が提案することへのインセンティブを確保している」

 提案には手間や時間がかかる。対話への参加にも人件費や交通費などの費用が伴う。アイデアこそ改善の原点だから、これから民間提案を求める国や自治体の関係者には、インセンティブをおそろかにしないことを改めてお願いしたい。知恵の見せどころだともいえる。

 全国の主要都市で説明会を開催し、9月から提案募集を開始した国土交通省の「新たなPPP/PFI事業」は11月末が締め切りだ。今回は提案者が優位に扱われることは原則ないというスタンスだが、次の段階では提案のインセンティブを明確に示してほしい。日本の将来のために、優れたアイデアが集まることを願っている。