アクセスや周辺整備はどうするのか

 中間駅が郊外にできると、自治体は駅へのアクセス道路などを整備する必要が生じる。駅の建設費負担はJR東海と交渉の余地があっても、道路などの整備は自前にせざるを得ない。

 中間駅へのアクセス手段として家田委員長はかねて、高速道路を活用することが重要だと発言している。道路は一般道を含めれば面的な広がりを持っており、駅勢圏が広がる。幸い、どの中間駅も近くに高速道路が通っており、両者を短距離でつなげられる。

 在来線と接続する考え方も、もちろんある。しかし、ローカル線は高速運行に不向きな場合が多い。例えば、長野県の諏訪から飯田までは、高速道路を使えば1時間程度なのが、並行するJR飯田線を利用すると2時間はかかる。飯田線は曲線が多いだけでなく駅に進入する際の分岐(ポイント)がきついなど低規格になっている。改良するには、谷に橋梁を架けたり駅の前後で土地を買い増したりといった策が必要になり、ハードルが高い。JR東海の金子慎専務は審議会で、飯田線に大きな力を持たせるのは事実上無理だと述べた。

 東京側のターミナルとして想定している品川駅についても、アクセスの検証が必要だろう。業務の中心地である大手町・丸の内・有楽町地区からは5~7kmほど離れている。他線から品川駅への乗り入れを強化したり、地下鉄を新たに整備したりといった策も必要ではないか。また、成田・羽田の両空港とどう連携していくか、ビジョンを描くことも必要だ。

駅の想定地域 高速道路など 鉄道(JR)
神奈川 相模原市域 さがみ縦貫道路 横浜線、相模線
山梨 甲府市付近など 中央自動車道、中部横断自動車道など 中央本線、身延線など
長野 飯田市付近など 中央自動車道、三遠南信自動車道など 飯田線など
岐阜 東濃地域 中央自動車道 中央本線
三重 亀山市付近 東名阪自動車道、新名神高速道路、伊勢自動車道 関西本線、紀勢本線
奈良 奈良市付近 京奈和自動車道 関西本線、奈良線など
中間駅でアクセス手段として想定される道路と鉄道。神奈川であれば、京王相模原線や小田急多摩線(要延伸)、奈良であれば近鉄各線などもアクセス手段の候補となる (資料:ケンプラッツ)

 駅へのアクセスに絡み、設置場所を巡る問題提起もあった。日本政策投資銀行地域振興グループの藻谷浩介参事役は、新たな投資を抑えるために中間駅は市の郊外に設置すべきでないとの持論を述べた。

 明治時代以来、国が鉄道を整備するに当たって重視したのはネットワークの構築だ。低コスト・短期間で路線を全国に張り巡らせるため、京都駅や大阪駅のように街の中心から離れた位置に駅を設置することが多かった。現在、建設が進む整備新幹線に至るまで同様の考え方が続いている。私鉄が中心街を指向するのとは対照的だ。

 中心市街地を避ける考え方は、リニア新幹線ではより顕著になる。JR東海は南アルプスルートを推進する理由の一つに、用地買収が他の2ルートより少なくて済む点を挙げている。地権者への事前補償なしに大深度地下を利用できる制度(大深度法=大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)があるものの、適用できるのは3大都市圏内で定めた対象地域だけだ。

 郊外に駅を設置する場合の事業費は、鉄道事業者側で小さくなる一方、自治体側では大きくなる。新たなまちづくりが必要となるからだ。山梨や長野では、平坦地が少なく土地造成などによって高コストにつながる恐れもある。コンパクトシティの考え方を取り入れて中心市街地の活性化を図る自治体が増えるなか、新たな核を設けることは得策でない、というのが藻谷参事役の意見だ。

 ただし、“逆張り”の意見もあった。岐阜県の古田肇知事によると、東海道新幹線の岐阜羽島駅はここ数年、乗降客が増えているという。1964年の開業に際して田園地帯に駅を造り、周辺の開発もあまり進まなかった。このため、岐阜羽島駅には大型観光バスが大量に乗りつけられ、三重・長野・飛騨高山などへの観光の起点になっていると現状を説明した。

 駅周辺をどう開発していくか、自治体にとっては大きな課題だ。まちづくりのあり方まで含め十分に議論できるよう、ルートを早期に決定する必要があるだろう。