ケンセツ的視点

リニア新幹線の審議で見えてきた問題点

2010/10/05

リニア新幹線
南アルプスルート
交通政策審議会
特集:リニア新幹線
リニア新幹線の建設計画を審議する国土交通省交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会。写真は第1回会合の様子 (写真:ケンプラッツ)
リニア新幹線の建設計画を審議する国土交通省交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会。写真は第1回会合の様子 (写真:ケンプラッツ)
中央新幹線小委員会第1回会合であいさつする家田仁委員長 (写真:ケンプラッツ)
中央新幹線小委員会第1回会合であいさつする家田仁委員長 (写真:ケンプラッツ)
リニア新幹線が想定する3つのルート。JR東海は南アルプスルート(Cルート)を前提に計画を立てている。長野県は20年来、伊那谷ルート(Bルート)を主張していた (資料:JR東海の資料を基にケンプラッツが作成)
リニア新幹線が想定する3つのルート。JR東海は南アルプスルート(Cルート)を前提に計画を立てている。長野県は20年来、伊那谷ルート(Bルート)を主張していた (資料:JR東海の資料を基にケンプラッツが作成)

 2027年の開業を目標に東海旅客鉄道(JR東海)が進めているリニア新幹線の建設計画について、国土交通大臣の諮問機関で審議が進んでいる。月に1度のペースで9月29日までに8回の会合を開き、関係者や有識者に対するヒアリングを終えた。審議が折り返し地点に到達した今、見えてきた問題点を整理する。

 審議は、国土交通省の交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会に設けた中央新幹線小委員会が担当する。委員長には東京大学大学院教授の家田仁氏が就任している。

南アルプスルートで決着できるのか

 審議会で最も関心が集まっていたのは、ルートについてだ。JR東海と経由地の長野県で意見が対立し、ゆくえが注目されていた。JR東海が計画の前提とする南アルプスルートに対して、長野県が求める伊那谷ルートは路線が60km長くなることから、工事費は6400億円高く、所要時間は7分余計にかかる。

 審議会は、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)が定める手続きに沿って、営業主体と建設主体の指名、整備計画の決定に関して国交相に答申する。本来はルート関連の事項まで含める必要がないものの、審議を始める際に国交省が議論を求めた。

 JR東海と長野県のこう着状態が解消に向かったのは、6月4日の第4回会合でのことだ。長野県の村井仁知事(当時)が南アルプスルートを選択肢の一つとして容認する考えを示した。県内の意見を集約するために伊那谷ルートを主張してきたという20年来の経緯を説明。そのうえで、科学的見地と中立的立場から県民が納得できるよう審議してほしいと発言した。

 同会合で、山梨県の横内正明知事は南アルプスルートが望ましいと表明した。市街地や農地を極力避けられるといった理由に加え、仮に伊那谷ルートとなれば、並行するJR中央本線の特急列車の運行本数が減らされると、地域ならではの懸念を示した。

 パブリックコメントでも南アルプスルートを支持する意見が多かった。長野県内から出された意見に限っても、南アルプスルートの支持が453件と、伊那谷ルート支持の37件を大きく上回った。

 ただし、諏訪・上伊那地域では今でも伊那谷ルートを求める声が強い。地域感情に配慮しながら合意を形成していくことが求められる。

中間駅の建設費は誰が負担するのか


高槻 長尚ケンプラッツ



読者のコメント (11 件)  ※[ログイン]すると全文表示、投稿・投票ができます
大深度地下、大山脈貫通などの工事に使われるエネルギーは莫大なものになると思うが、どのように賄うか、また走行時にも極低温で超電導を保つに必要な電力はどのくらいか、また停電することはないのか、など心配が多い。我々の納める税金だけはあまり喰わないでもらいたい。新幹線利用で貢献してしまっていることは仕方がない。せまい日本、何億年か後は、どうなるか。
(ハムスターB 2011/09/06 23:44)

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仮に作るなら大阪付近-東京付近を一気に、でしょう。名古屋までじゃ、さすがに採算は取れないでしょうし、リニアを維持するために東海道新幹線を名古屋乗り換えダイヤに、とかやった日には(今の東海ならやりかねませんし)新幹線そのものが崩れてしまいます。

そのくせ、費用は10兆程度は見込まれ、一時的にせよ国が肩代わりを行えば、その他地方のインフラ整備はもちろん、その他の部分にまで予算が喰われる事になるでしょう。

そんな脆弱な部分を孕んだインフラに何時まで固執するのでしょうか?
現状の東海道新幹線もそれなりの費用(1兆?)かけて、熱海を初めとする旧来の規格が故の減速区間を手直ししたら、等、もう少しやれる事はあると思うのですが。
(boroneko2k 2010/11/01 15:57)

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中国では日本のN700の技術を導入し415km/hの営業運転を行うとのこと。
線形を優先するという方針の報道がありますが、それならば同じように400km/h以上の営業運転にすればリニア規格に固執しなくても良いように思えます。
新幹線規格であれば新横浜と名古屋で接続し乗り入れできるので、東京、大阪との直通も容易に行えるのではないでしょうか。
(緑 2010/10/20 00:51)

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建築・土木のwebsiteですから業界にどれだけ貢献するかの視点です。鉄道の意義や需要の考え方などの記述は一貫していませんが、そのあたりを含んで読めば、これはこれで面白いシリーズですよ。
(時々訪問 2010/10/10 17:39)

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昨年、フランス旅行中にアヴィニョンTGV駅を利用しましたが、その簡素で美しい駅に感銘をうけました。富士山を背景にこんなリニア駅があればすてきだなと思ってしまいました。アヴィニョンTGV駅は街の中心部(中心部にはSNCFの旧駅あり)より南に3キロ程離れており、回りは360度駐車場になっています。近くに旧線の路線があり、それとは結節していませんが年間300万人の利用があると聞きました。その建設費(2001.6月完成)は35,000万フラン(当時のレートで約67億円)でJR東海が中間駅で350億円かかると言っている事を思うと割安感があります。アヴィニョンTGV駅は立地方法(自動車のみのアクセス)やコストでリニア中間駅の参考になるように思います。
(2010/10/08 15:16)

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リニア新幹線が必要なのは東海道新幹線を作り直す必要があるからでしょう。開通から46年たちメンテナンスで延命しきれなくなるのは目に見えている。補修ではなく全面交換の期間の代替手段ですから交通量の需給と無関係に「なにがしかの」新線が必要です。既存の中央線では代替できません。そちらを改造するより最短期間、最小費用の南ルートを選択するのは当然です。本来は中間駅も必要ない。東海道新幹線の再建築が完了してから中間駅の増設を議論すべきです。とにかく東海道新幹線の寿命は目前です。道路みたいに第二東名を作りますか?リニアにしますか?の選択だと思います。社会的に議論があるなら東海道新幹線再建築後にリニアを廃線してもよいと考えます。
(2010/10/06 14:04)

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航空業界はLCCの参入が急速に進んでいる。国内線も世界的な価格競争の波にさらされるのは時間の問題だろう。そうなれば当然中央新幹線も価格を下げざるを得なくなる。その点は十分考慮されているのだろうか?
(2010/10/06 13:43)

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はたして2027年にそこまでの移動速度への需要があるでしょうか?
(2010/10/06 12:25)

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記事中の「大阪まで延伸できるか ?、もっと早く大阪まで開通させるべきだ、名古屋までで打ち止めになるのではないか」という議論は、あまりに小さいと思います。リニアモーターカーの利点である高速度で短時間で旅行できる事を考えれば、大阪どころか全国縦断、さらには世界中にまで広がって、初めて活きてくるのではないでしょうか?
(素朴な疑問を持つ者 2010/10/06 09:00)

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 Kenplatzでは以前この記事(http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/knp/column/20090701/533704/)にて「南アルプスルートは建設できるか?」自ら問題提起しています。
 ですが、その後の数々のリニア関連記事では、すでに上記の提言は既に忘れ去られています。
 今回の記事こそ、もう一度問題点を振り返らなければならないのに、全く触れられず。
 もう、上記の記事を掲載したことは「忘れて欲しい」というKenplatzの政治的意思がこめられていると受け止めます。
(teft 2010/10/05 17:10)

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建設ありきで枝葉の議論が進んでますが、そもそも「建設すべきか否か」「なぜ建設するのか」の根本的な議論が不十分のように思います。

結果的に建設することになるとしても、そういった根本的な議論がきちんとされていないと、中途半端なものを作ることになります。時短を優先するのか中間駅を優先するのかという議論も、結局は「なぜ建設するのか」という根本的な問題に戻ります。

プロジェクトにおいて最も重要なのは目的・目標の設定です。そこが曖昧で、コンセンサスが得られないまま進めていけば、利益誘導合戦になってプロジェクトは迷走します。日本の国家プロジェクトにはリーダーシップが無いと言われる原因はそこです。枝葉の議論より、もっと根っこの議論を尽くすべきです。根っこがきちんと定まれば枝葉は自ずと見えてくるはずです。
(2010/10/05 11:22)

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