提案者が優位に扱われることは原則ないが・・・

 結論は、今回の募集で提案者が優位に扱われることは原則ない。別の言葉にすると、提案に対する直接の見返りはない。

 説明会の資料に記された「ご提案頂きました案件の内容、情報につきましては、施策の検討、案件の熟度の向上のために利用します」、「本事業提案はニーズや課題の発見を主たる目的としており、国による予算措置につながるものではありません」が、国交省の用意した答だ。

 国交省によれば、今回の募集で想定しているのは、プロジェクトが事業者選定まで具体化していないアイデア段階のもの。従って、この段階で提案者を優位に扱うことは原則ないという説明だ。これとは別に、透明性や公平性を旨として民間事業者を選ぶ現行の制度の下では、どうにもできないという事情もあるようだ。

 ただ、提案の熟度や進行度合いによって、判断が異なるケースは出てくるという含みは持たせている。仙台会場では、自治体職員の質問に対し、次のような補足説明もなされた。

 「事業の青写真の段階から共同提案でやってきた(民間)事業者と、そのまま事業化までゴールした方がやりやすいというケースがあれば、今後の選定手続きについて、こういうような見直しをすべきだという提案をいただければ、検討したい」(国土交通省政策課の新垣慶太政策企画官)。

 説明会の後で、「提案して、アイデアだけ取られてしまう心配はないか」とも聞いてみた。

 これ対して国交省は、「アイデアを秘匿してほしい」という要望には応えたいと説明する。例えば資金調達のスキームで、民のノウハウが詰まっている場合は、秘匿したままで議論をする用意がある。ただ、制度見直しに関する提案は誰にでも波及するものなので、できることに限りはあるという。そもそも、同種の提案が複数件、寄せられることだって考えられる。提案者は独自案だと思っていても、独自案だと見なされないケースも出てくるだろう。

 さて、こうした事情を踏まえたうえで、民間事業者はどう行動すべきか。説得力のある提案をするには、時間も労力もかかる。悩ましいところだが、筆者は長期的な展望をもって提案すべきだという考えに行き着いた。

 新しい取り組みを拡大していくには、なるべく早くから準備をしておいた方が有利だ。それに今回の募集では、提案の内容を提案者と国交省が共同で磨き上げていく手続きも用意されている。両者の議論のなかで提案の至らぬところを知り、ノウハウを蓄積することができるだろう。それに、日本の社会資本整備をなんとかしたいという思いが根底にある。