所属建築士から外されていた

 設計事務所は設計・工事監理が本業なので対応が行き届いていた。建設会社は部署によって対応を変える会社もあるようだ。D氏の建設会社では、設計業務を直接手掛けない部署の社員は、建築士資格者であっても所属建築士から外されていた。ハウスメーカーや不動産会社は、設計事務所や建設会社ほど周知徹底を図っていない印象だ。ちなみに定期講習の受講料はすべてのケースで会社が負担していた。

 2008年11月に施行された改正建築士法では、建築士事務所に所属している建築士(所属建築士)に対し、3年ごとに定期講習を受講することを義務付けた。設計・工事監理などの業務を「業」として行う建築士に対する“縛り”だ。ただし、行政職員や大学教授、建築とは異なる分野の会社に勤務する人など、建築士事務所に所属しない建築士には定期講習の受講を義務付けていない。

 定期講習は09年2月から始まった。法改正後の最初の受講は12年3月31日までに済ませておく必要がある。定期講習を受講しなくても罰金や罰則はない。しかし、定期講習の受講義務違反は建築士法の定めに違反することになるので、受講を促す注意を行っても受講しない場合は、建築士法違反として懲戒処分の対象になる。なお、過去3年度に定期講習を受講していない建築士が異動や転職に伴って所属建築士になる必要がある場合は、改めて受講すればいい。

 飲み会で会った友人たちは、たまたま現在の所属部署が設計部門でなかった。そのため、会社から所属建築士として扱われず、定期講習の受講も督促されなかった。法改正後2年近くたった今まで、「設計部に異動したらどうなるのか」「有資格者として設計事務所に転職できるのか」――など、苦労して試験に合格した一級建築士の存否について様々な思いを巡らせていたようだ。同じようなことを心配する読者も多いのではないだろうか。改正建築士法についての詳細は、新・建築士制度普及協会のホームページのQ&Aでわかりやすく解説している。一読をお薦めする。