入居者一人ひとりは個室で暮らしてプライバシーを確保しつつ、キッチンやリビング、場合によってはトイレなどを共用する「シェアハウス」。2008年に放映されたテレビドラマ「ラスト・フレンズ」の舞台になり、シェアハウス専門の不動産仲介ウェブサイトができるなど、その存在は一般化したといっていい。ただし、あくまで「都心部の若者に人気」「20~30代の会社員が注目」というのが実情だろう。

 そんななか、「高齢者向けのシェアハウスがあってもいい」と話すのは園田眞理子氏。高齢者住宅や少子高齢社会の問題を研究する、明治大学理工学部建築学科の教授だ。「特に貧困層にとって有効な選択肢になるのではないか。月額約6万円の国民年金では暮らせない高齢者でも、5人集まれば月額約30万円になり、1人で暮らすより豊かな生活を送ることができるはずだ。見守りなども入居者同士でカバーできる」と、高齢者向けシェアハウスの利点を説く。

 園田氏がこう訴える背景には、良質の「高齢者住宅」が不足している状況がある。特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームといった「高齢者施設」に入るほどではないが、心身ともに将来の不安を抱える人向けの住宅だ。介護サービスは必要なときだけ選択して受けることができる。