三井住友海上駿河台ビルの緑地(写真:ケンプラッツ)
三井住友海上駿河台ビルの緑地(写真:ケンプラッツ)

 「環境配慮型の建物(不動産)=グリーンビルディング」が注目を集めている。国土交通省が投資家などを対象に実施した調査では、回答者の97%が環境不動産への投資に関心があると答えていた。

 とはいっても、現時点でグリーンビルディングに確固たる定義があるわけではない。省エネ性能や生物多様性などを備えることがグリーンビルディングの要件だと、世の中では言われている。しかし、これといったイメージがつかめないままにいた。

 そんな筆者が「これこそグリーンビルディング」と、納得した建物がある。東京都千代田区神田駿河台の「三井住友海上駿河台ビル」(完成当時は大正海上本社ビル)だ。東京都の公表資料を基にケンプラッツが集計・比較し、1m2当たりの年間温室効果ガス排出量が少ないオフィスビルの実質3位に選んだ。調べてみると、その成績の良さには理由があった。

 詳しくはケンプラッツの記事「今も省エネ優等生、84年築の三井住友海上駿河台ビル」を読んでいただくこととして、ここでは簡単に振り返っておく。

 まず、1984年に完成した建物であるにもかかわらず、省エネ性能が高い。日射負荷を軽減する深い庇や、窓の下からせり上がるブラインド、自然通風に役立つ換気窓を備えている。平面プランは熱負荷も考慮して決定した。そんなことが「日経アーキテクチュア」84年12月17日号に書かれている。日建設計の20年以上前の創意工夫に、思わず拍手を送りたくなった。

 次は管理者の努力だ。温室効果ガス排出量を減らすために、駿河台ビルでは非常階段の照明をセンサー付きにしたり、高反射率塗装を塗ったり、数々の改善に取り組んできた。日常管理では、先に紹介した換気窓を活用している。夏場なら、換気窓を開けるだけで27~28度の室温が3~4度下がり、消費電力量の抑制につながっている。省エネ性能が高いビルには、削減余地が少ないという管理者泣かせの側面があるが、それでも駿河台ビルは温室効果ガスを削減し続けている。