建築20:土木1:不動産2――。

 6月18日に閣議決定した政府の新成長戦略に記された、それぞれの単語の数だ。92ページ分の報告書をダウンロードし、PDFファイルの検索機能を使ってカウントした。

 大学の建設系学科のなかで並び立つ「建築」と「土木」だが、政府の成長戦略の文章上は、圧倒的な差をつけて建築が目立っている。建築という単語は「建築物の建て替え」「建築士等の資格の相互承認」「建築物の耐震診断」「建築基準法の見直し」といった脈絡のなかで登場する。建築に関係が深い言葉としては「住宅」が84回、「リフォーム」が12回出てきた。

 不動産は、「内需主導の経済成長を実現するための住宅・不動産市場の活性化の促進」「保険会社が海外不動産投資や外国保険会社の買収等を行う場合に障壁となる規制の見直しの検討」と盛り込まれている。

 では、たった一つの土木はどうか。「土木・建築等で高度な技術を有する日本企業のビジネス機会も拡大する」と、説明的に使われただけだ。

 公共事業の削減が進むなか、言葉としての「土木」の影は薄くなりつつあるようだ。土木工学科の在籍者や出身者のなかには、活躍の場が狭められるような寂しい思いを感じる人がいるかもしれない。だが、成長戦略を読むと、土木の仕事が別の言葉として盛り込まれていることに気づく。例えば「インフラ」は32回登場する。「社会資本」は13回だ。ほかにも、空港14、港湾12、道路10といった具合だ。

 建築と土木の双方の力が必要な「都市」は61件検索できた。「都市計画の在り方や都市再生・再開発の在り方を環境・低炭素化の観点から抜本的に見直す」「都市全体を輸出パッケージとして、アジア諸国との政府間提携を進める」といった記述がある。

 成長戦略のなかで、国家戦略として示された21のプロジェクトのなかには、「公共施設の民間開放と民間資金活用事業の推進」というテーマがある。これに伴って「PFI」という単語が11回登場。「PPP」は4回、PPPの日本語訳である「官民連携」は7回出てきた。

 もとより、建築や土木の言葉の登場回数を競うこと自体に意味などありはしない。知りたかったのは、ケンプラッツの主要な読者である建築、土木、不動産の実務者が、未来の仕事にどうかかわるかということだ。建築や土木は、国の成長に不可欠な手段であり施設だ。だから、建築や土木に関連する言葉が多数、この成長戦略に盛り込まれているのだと思う。

 他国との競争の舞台となる「高度な都市」を構成する要素として、高機能な住宅やインフラが必要である。アジア諸国の発展に貢献するために、日本の建築・土木分野のノウハウを生かすことができる。

 建設の仕事は、ただつくることから、なぜ必要で、どう運営するのかを徹底的に考えてつくる方向に、間違いなく変化している。長期的な視点で未来の利用者ニーズをつかみ、社会に提案することが、建築・土木を含めた建設実務者の重要な仕事になってくるのだと確信している。