国交省の成長戦略の柱の一つでもある「観光」。経済発展が進む中国からの観光客をいかに取り込むかがポイントとなる。そして今、中国人に最も人気のある日本の観光地といえば北海道だ。日本政府観光局が2010年5月に発表した調査では、中国の旅行会社各社に「2010年に人気を得そうな訪日ツアー商品」を目的地別で聞いたところ、北海道が圧倒的な支持を集めていた。

 北海道の新千歳空港は、中国などから急増する観光客に対応するための施設「新国際線旅客ターミナルビル」を2010年3月にオープンした。搭乗手続きの混雑緩和のために、機内預け荷物を自動で保安検査する「インライン検査方式」を導入したり、国内線ターミナルビルとの連絡通路で、高齢者や妊婦をサポートする電動ヘルプカーを運行するなど、“お客さま”である旅客への様々な配慮がなされている。

 このターミナルビル3階の出発ロビーの天井を見上げると、ダウンライトやスポットライトが見あたらないことに気づく。広い空間を見渡しても、まぶしい光源が直接、目に飛び込んでくることがない。旅客の視覚にやさしい照明デザインだ。

天井に照明器具が見あたらない新千歳空港国際線ターミナルビルの出発ロビー(写真:金子俊男)
天井に照明器具が見あたらない新千歳空港国際線ターミナルビルの出発ロビー(写真:金子俊男)

 光源は、出発ロビーの店舗などの屋上に設置してある。ここから天井に向けてライトを照射する。細い魚のような形をした天井の構造体の部分に取り付けたミラーに反射させ、床面を照らす仕組みだ。ミラーは鏡面性の高いアルミ二ウムの板材をドイツから取り寄せた。照明デザインを担当したライトデザインの東海林弘靖氏によると、この特徴的な構造体は、元々の建築設計の段階で既に存在していたもので、それを生かして照明デザインを作り上げていったのだという。

特殊な反射鏡を付けた照明器具で配光角の狭い光を作る。それを天井のミラーに当てて反射させる。照度は床面500ルクスで設計した(資料:ライトデザイン)
特殊な反射鏡を付けた照明器具で配光角の狭い光を作る。それを天井のミラーに当てて反射させる。照度は床面500ルクスで設計した(資料:ライトデザイン)