DVDの企画・編集・制作に携わった。というよりも、ここしばらく忙殺されていた。映像の編集は小学生のときに父に教えられて8ミリフィルムを刻んで以来。“売り物”を作るのはもちろん初めての経験だった。切った張ったのアナログしかなかった当時とは時代が全く違う。

 専用の編集ソフトの存在さえ知らず、やれオーサリングだ、レンダリングだ、ノンリニアだ、尺がどうの、16:9がどうの、果ては「このデジタルビデオカセットレコーダーで8mmビデオをデータ化するにはIEEE1394が必要です」だの、耳慣れぬ専門用語が飛び交う打ち合わせは戸惑いの連続だった。

 “頼むからおじさんにも分かる言葉で説明してくれ”と思いつつ、話の流れを邪魔するわけにもいかないと、当初はだんまりを決め込んだ。ただ、どのように仕事が進んでいくのか、どの段階の作業にどれだけの時間が必要なのか、書籍や雑誌の編集と違ってイメージはさっぱり湧かず、制作関係者には大いに迷惑をかけてしまったと反省している。

 全体のシナリオは当然ながら企画を担当した私が書くしかない。当初は理想を追いかけて“あれもこれも”と欲張って内容を膨らませたが、映像制作の担当者との打ち合わせで「現場撮影は7回まで」とくぎをさされて大幅に後退。予算は限られている。編集とはあきらめの連続だ。それは先刻承知のつもりだったが、活字媒体とは全く勝手が違った。

 まず、筋書きの詰めとは関係なしに映像を撮り溜めていくのに一苦労した。全6章の書籍をいきなり4章からスタートし、1章、5章、3章の順で書き上げていくようなものだ。終盤になってから「あの場面の映像がない!」という事態に陥るのは目に見えていたが、とにかく目前の映像確保を優先するしかなかった。最終的に映像がないなら静止画を挿入する手もあるし、どうしようもなくなったらシナリオを調整すればよい、と腹をくくった。

 それよりも、土壇場になってシナリオの筋そのものが崩れる事態だけは阻止しなければならなかった。それほど不確定要素は多く、再現映像を撮れるシーンは限られていた。押せ押せのスケジュールの中で陽が傾き、現場で撮影断念を即決したシーンもあった。ナレーションの一部を急きょ録音し直す事態もあった。そのたびに頭の中を“シナリオ変更!”“スケジュール調整!”の文字が飛び交った。編集とはハプニングの連続だ。

 当初書いたシナリオには実は大きな“穴”がぽっかりと開いていた。設計者の頭の中を図解するという、最初から映像にはなりそうもない場面があったからだ。図面やイラスト、テロップやナレーションなど、動画以外のあらゆる手法を駆使して「尺」を埋めるしかなかった。DVDには映像内容を補足する冊子を付けることがあらかじめ決まっていたので、この冊子も存分に活用した。映像と紙で相互補完する形の媒体があってもいいと割り切った。建築設計も同じかもしれないが、編集とは割り切りの連続だ。

 6月1日をもって修羅場はようやく終了した。オーサリングを終えたDVDの動作チェックや同梱冊子の入稿も、このほど完了した。DVDは60分の大作。最初の撮影から6カ月。活字媒体と映像媒体の違いを思い知らされる毎日だった。スタッフのみなさんの多大なご協力にひたすら感謝するばかりだ。

 というわけで、日経ホームビルダー 見てすぐわかるDVD講座『実践 耐震リフォーム』(価格2万2000円+税、6月25日まで予約特価1万8000円+税で受付中)は、6月末に弊社から発行される。弊社きってのアナログ編集者によるDVDだが、内容は問題提起も含めて充実し、画像も十分鑑賞に堪えるものだと自負している。読者の方々の日々の実務の改善に少しでも役立つことができれば幸いだ。