ブルドーザーを使った土砂の敷きならし作業で、三次元の設計データをもとに排土板の高さなどを自動制御しながら施工する――。このような情報通信技術の利点を活用した「情報化施工」の取り組みは、大手建設会社が手がける空港や道路などの大規模造成工事現場でよく見られるようになってきた。

 重機の操作には多少の慣れが必要だが、比較的短期間で使いこなすことができ、一度使ったオペレーターの多くは「従来の方法には戻れない」といった感想を持つそうだ。オペレーターの熟練度に左右されずに品質を確保できたり、作業日数を短縮できたりとメリットは多い。ただ、このシステムを施工者が自社でそろえようとすれば、重機の種類にもよるが少なくとも1000万円程度の費用が必要になるという。

 建設市場が縮小傾向にあり、受注環境は厳しくなるなか、中小会社が取り組むには大きな投資だ。ただそんななかでも、得意分野を強化し、受注に結び付けるために、体制を整えている中小会社がある。例えば、従来に比べて施工精度を上げ、設計値により近付ける目的で導入し、元請け会社の信頼を得ている会社がある。

 そうした会社の技術者の話を聞いていると、彼らはその技術を使って何をしたいのかを明確に持っていると強く感じる。重要なのは、彼らは情報化施工のシステムを、目標を実現する手段として活用しているということだ。新しい技術を採用する際におしなべて言えることかもしれないが、「はやっているから」、「他社が導入しているから」、といった理由だけで導入しても、メリットを十分に享受できない可能性がある。せっかくの武器を無駄にそろえるだけになってしまいかねない。

 国土交通省は、2008年に取りまとめた情報化施工推進戦略のなかで、12年度までに道路土工事、舗装工事、河川土工事の中小規模の現場に、このような情報化施工を標準的な工法として定着させることを目標にしている。直轄工事の受注を考える会社は、それまでに相応の準備が必要だ。ただその前に、まずは何のための情報化施工なのかをきちんと考えて臨む必要があるだろう。