国土交通省の成長戦略会議がまとめた提言の中に、こんな一節がある。「高い経済成長などを背景に、5~10年後には上海などが台頭し、東京でさえ地位が交代する可能性も指摘されている。残された時間は少なく、日本の成長を実現するためには、東京をはじめとした我が国の大都市の国際競争力強化に向けて、早急に国を挙げて取り組みを強化することが必要である」――。

 国際的な大都市として急成長を遂げている中国・上海。筆者は4月末から5月上旬にかけて、万博取材で上海へ行く機会を得た。この地を訪れるのは3年連続となる。この都市の変化のスピードは、とてつもなく速い。日本から最新の旅行ガイドを持っていったが、地図は既に古くなっていた。

4月30日夜、上海万博の開幕式で多数の花火が打ち上げられた(写真:ケンプラッツ)
4月30日夜、上海万博の開幕式で多数の花火が打ち上げられた(写真:ケンプラッツ)

 上海万博は華々しく幕を開けた。参加国・機関は246と史上最多で、中国の巨大な市場に吸い寄せられた。経済面での影響力の大きさを、巨大イベントを通じて世界に向けて誇示した格好だ。中国にとっての課題は万博後だが、市内を見て回った感覚ではしばらくは発展の勢いを持続しそうだ。

 上海市政府は、万博に併せて関連プロジェクトの整備を急ピッチで進めた。交通、物流の利便性を高め、観光客の誘致にも余念がない。都市の国際競争力の向上を見据えた成長戦略が、そこにはある。

超高層ビルが建ち並ぶ浦東地区を臨む。手前には外灘地区の歴史的建造物が見える(写真:ケンプラッツ)
超高層ビルが建ち並ぶ浦東地区を臨む。手前には外灘地区の歴史的建造物が見える(写真:ケンプラッツ)