コンクリートの超高強度化は、サステナブル建築の実現に貢献する――。

 実用化レベルでは世界最強となる300N/mm2(以下、N)コンクリートの試作品を公開し、200Nコンクリートを実用化したと、5月19日に発表した大成建設。当日の説明では、超高強度化が地球環境問題に貢献することを強くアピールした。

 その理由として、以下の4項目を挙げる。
(1)素材として、強度当たりのCO2排出量が減る
(2)部材1m当たりのCO2排出量が減る
(3)地震時の損傷が少なく、長寿命に貢献する
(4)中性化がほとんど進行しないので、高耐久に貢献する

 (1)は、セメント、砂、砂利、水といったコンクリート構成材料ごとのCO2排出量原単位を基に、1m3当たりのCO2排出量を算出。これを設計基準強度で割った指標だ。原料のうち、CO2排出量が多いのはセメントだ。超高強度化する際、セメント使用量の増加率よりも、強度の上昇率が大きいので、超高強度になるほどCO2排出量の割合が減る傾向がある。

 (2)は柱部材1m当たりのCO2排出量を比較したものだ。強度が高いほど部材断面が細くなり、コンクリートや型枠の使用量は少なくなる。大成建設は、設計基準強度が80N、140N、200Nのコンクリートを比較した。80Nを1とすると、140Nは約8割、200Nは約7割に削減できた。

柱単位長さ当たりのCO2排出量(資料:大成建設)
柱単位長さ当たりのCO2排出量(資料:大成建設)

 (3)では、強度が100Nを超えると損傷しにくくなることを確認した。部材のサイズが同じなら、同じ地震力を加えた時、超高強度部材は損傷せず、少し亀裂が入るくらいだ。大成建設では、超高強度コンクリートを用いる場合、変形しても元に戻る弾性範囲内で設計することを前提としており、大地震時にも無損傷だ。この結果、大地震に遭遇しても使い続けることができるので、建物の長寿命化に貢献する。

 (4)の中性化は、同社が実験室レベルでJISの中性化促進試験を実施して確認した。水セメント比が20%より低い超高強度コンクリートでは中性化がほとんど進行しなかった。住宅で「高耐久」といわれる水セメント比50%程度でも、10mmくらい中性化が進行している。超高強度コンクリートは、それよりもはるかに高い耐久性を確保できる。