国土交通省が2010年3月に設置した「建築基準法の見直しに関する検討会」の会合を傍聴している。前回の法改正で大規模建築物の建築確認に導入された構造計算適合性判定(適判)のあり方がよく議論になる。建築設計・施工者の委員から出る適判の対象縮小の主張は、ほかの委員の支持を必ずしも得られていない。設計・施工者が期待するような「見直し」が実現するかどうかは微妙というのが、第3回会合(4月15日)が終わった時点での印象だ。

2010年4月15日、霞が関ビル35階の東海大学校友会館で開かれた「建築基準法の見直しに関する検討会」の第3回会合(写真:本誌)
2010年4月15日、霞が関ビル35階の東海大学校友会館で開かれた「建築基準法の見直しに関する検討会」の第3回会合(写真:本誌)

 日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会(日事連)、日本建築家協会(JIA)の各代表者など、建築設計関係の検討会委員は、第2回会合(4月1日)での意見発表で、適判を義務付ける建物の範囲を縮小するよう、異口同音に訴えた。傍聴していて、「耐震偽装を犯す悪質な者はごく一部の例外に過ぎないのだから、設計者をもっと信頼してくれ」という思いが強く伝わってきた。この思いは、第3回会合で意見を発表した施工関係の委員も共有していた。

 こうした設計・施工者側の意見に対し、欠陥住宅問題に取り組む弁護士の委員が、過去に千葉県市川市の超高層マンションで鉄筋不足が生じたことや、第2回会合の翌日に新たな構造計算書の偽装が発覚したことなどを指摘して、確認審査の厳格化を継続すべきだと主張した。さらに適判機関や特定行政庁の委員も、設計者の信頼性を疑問視する発言をした。

 適判機関では都市居住評価センター(東京都港区)の委員が、適判でわかる構造設計の問題点は偽装だけでなく、設計者の知識不足や入力作業ミスも含まれると指摘した。より衝撃的だったのは、横浜市建築局の委員による発言だ。「2007~09年度に適判の対象となった市内の物件のうち約3割は、構造設計に補正不可能な問題点があったために確認申請が取り下げられた」と述べた。

 都市居住評価センターと横浜市が正式に意見を発表するのは4月26日に開かれる予定の第4回会合で、その際にはまた別の主張をする可能性もある。ともかく第3回会合の時点では、設計者には耐震偽装をするような悪質な者のほかに能力不足の者もいると警鐘を鳴らした。

 2009年秋に政権交代があってから、国交省の政務三役は確認審査の迅速化や確認申請図書の簡素化の方針を掲げてきた。設計者には信頼回復と適判の縮小を期待させる方針だといえる。しかし検討会の雲行きは、いまは必ずしもその方向ではなくなっているようだ。確認審査はやはり厳格であるべきだという結論がもし出れば、木造住宅の設計者への信頼を前提とする制度「4号特例」についても廃止論が台頭しそうだ。

 検討会では木造住宅も議論の対象になっている。その内容の一部は、日経ホームビルダー2010年5月号の「使えるニュース」にまとめた。