豊洲か、築地か――。3月30日に東京・築地市場の移転関連費用を盛り込んだ2010年度の東京都中央卸売市場会計予算が成立した。豊洲への移転に反対する民主党が「現在地での再整備について検討し、知事は検討結果を尊重する」という付帯決議を付けることで自民、公明両党と折り合った格好だ。予算成立を受けて東京都議会民主党は4月13日、築地市場の再整備案を一般公募すると発表した。

 「図面はもちろん、文章だけでもかまいませんし、説明の絵はポンチ絵(簡単な絵)でもかまいません。形式は問いませんし、市場の基本的な機能が築地で再整備されるアイデアであれば、制約はありません」。東京都議会民主党のウェブサイトではこんな説明をしながら、アイデアを募っている。応募者の年齢国籍は不問。公募したアイデアは、都議会で提案することなどを視野に入れる。締め切りは郵送の場合、5月16日だ。

築地市場と豊洲新市場の建設予定地などの位置関係。東京都のウェブサイトによると、環状第2号線は江東区有明2丁目から中央区、港区などを経て千代田区神田佐久間町1丁目を結ぶ、全長約14kmの幹線道路。かつては築地市場を現在地で再整備する予定だったことから地下式構造としていた。その後、豊洲への移転に方針を転換したため、構造形式を地下式から地表式へ変更した経緯がある (資料:東京都中央卸売市場)
築地市場と豊洲新市場の建設予定地などの位置関係。東京都のウェブサイトによると、環状第2号線は江東区有明2丁目から中央区、港区などを経て千代田区神田佐久間町1丁目を結ぶ、全長約14kmの幹線道路。かつては築地市場を現在地で再整備する予定だったことから地下式構造としていた。その後、豊洲への移転に方針を転換したため、構造形式を地下式から地表式へ変更した経緯がある (資料:東京都中央卸売市場)

 老朽化や狭あい化が長年の懸案となっている築地市場で、どのような「再整備案」が考えられるのか。民主党の中山義活衆院議員らが発起人となった移転反対派の「21世紀築地プロジェクトチーム」が2月18日に発表した案では、晴海地区を活用して「全機能を一時移転して建て替える案」「一部機能を一時移転して段階的に建て替える案」「一部機能を完全に移転する案」の3つを示している。

 現在地での再整備について、建設プロセスに踏み込んで独自に検討を重ねる建築実務者もいる。構造設計事務所のSDGは、約2年前から事務所内で計画のあり方を議論してきた。同事務所は、人工地盤の建設と市場機能の移転を繰り返すことで、再整備を可能とする案を提示している。次ページには、建設プロセスを模型写真とともに示した。

SDGが検討してきた再整備案。隅田川に架かるのは、建設予定がある環状第2号線だ (資料:SDG)
SDGが検討してきた再整備案。隅田川に架かるのは、建設予定がある環状第2号線だ (資料:SDG)

人工地盤は内部が3層で、高さが約20m。コンクリートのスペースフレーム(立体骨組み)でつくる (資料:SDG)
人工地盤は内部が3層で、高さが約20m。コンクリートのスペースフレーム(立体骨組み)でつくる (資料:SDG)