CO2排出量を25%削減できる新築マンションを購入するなら、余分に80万円近く支払ってもよい――。国土交通省の有識者会議が全国の住宅購入予定者を対象に、ウェブによる意識調査を行ったところ、こんな結果が明らかになった。前提とした光熱費削減分120万円を差し引いた額だ。政府が既に国会に提出した地球温暖化対策基本法案には、CO2排出量を1990年比で25%削減する中期目標を掲げている。建築・住宅分野でも規制強化が不可避だが、果たして対策は進むのか。

3月10日に開催した「環境価値を重視した不動産市場のあり方研究会」の会合(写真:ケンプラッツ)
3月10日に開催した「環境価値を重視した不動産市場のあり方研究会」の会合(写真:ケンプラッツ)

 調査を実施したのは、国交省の「環境価値を重視した不動産市場のあり方研究会」(座長:野城智也・東京大学教授)。“環境不動産”が評価される市場の形成に向けた情報整備のあり方について検討してきた。3月10日の第2回会合でまとめた報告書案で、居住者や利用者のコスト意識について調査結果を明らかにした。

「想定よりも高い」支払い意思額

 調査は、住宅購入予定者1079人、オフィスワーカー1096人を対象に、インターネット上でアンケートを実施。住宅・オフィスでのCO2削減について、それぞれいくら支払う意思があるかを尋ね、平均的な金額を推計した。

 住宅購入予定者は、CO2排出量を90年比で25%削減できる新築分譲マンションに対し、平均で約195万円追加して支払ってもよいと答えた。07年度のCO2排出量と同程度の新築マンションと比較した結果だ。想定する居住期間は20年間。光熱費は120万円削減できることとしたため、差し引き75万円を実質的に負担してもよいと答えたことになる。

 このほか、第三者機関による環境性能認証の取得や、生物多様性の向上の取り組みについて尋ねたところ、取り組みがない場合に比べて、住宅価格のそれぞれ6.7%、9.3%程度上乗せしても良いと回答。景観の保全については、管理組合費の追加額として、月々4400円程度は許容できると回答した。

 オフィスワーカーも同様に、環境価値を認める傾向が出た。CO2排出量が90年比で25%削減できるオフィスビルに、平均で月々約2100円を支払ってもよいと回答した。標準的なオフィスビルと比べた結果で、支払いは10年間、給料から天引きされる前提だった。

 「想定よりも高い」と、国交省土地・水資源局土地市場課の担当者は驚きを隠さなかった。筆者も意外に高いと感じた。調査は仮定に基づくもので、実際の判断とは異なるが、一定の傾向を読むことができるという。研究会は、調査結果から、住宅購入予定者、オフィスワーカーとも、環境性能が高い住まいやオフィスに対して一定の負担を支払う意思が潜在的にあると結論付けた。

 実際に環境不動産の経済価値は、価格に反映されているという。研究会は、実際のデータを用いて、環境性能評価の有無が市場価格に及ぼす影響を分析。東京都マンション環境性能表示、自治体版CASBEE(横浜市、川崎市)の届け出がなされている新築分譲マンションの募集価格は、届け出がないマンションよりも高いことが分かった。実際の価格への影響と支払い意思額が比較的近い値が出たことから、調査の結果は妥当だったとした。