3月11日に開港した茨城空港が、テレビのニュース番組で連日、報道されていた。羽田、成田に続く「首都圏第三空港」という触れこみだ。「搭乗ゲートと到着ゲートを同フロアにして建設費を抑えた」「空港使用料がほかと比べて半額近くに抑えられている」「格安旅行ができるかもしれない」といった「安さ」をキーワードにした空港の特徴が伝えられていた。

 むろん、新聞報道の中には、現時点の定期航路が1日1往復のアシアナ航空のソウル便しかなく、4月以降もスカイマークが運航する1日1往復の神戸便しか決まっていないことを問題視するものも少なくなかった。「開港時に国内定期便が1便も飛ばない空港が誕生した」「前途は多難というしかない」「需要予測が大甘だ」といった厳しい指摘もなされている。

 ただ、筆者には茨城空港が、「とても新鮮な建築」に思えた。「安い」ことをこれほどまでに前面に打ち出してアピールする建築をかつて見たことがないからだ。物流倉庫ならまだしも、立派で格好がいいイメージがあった「空港」を「徹底的にケチ臭くつくりました」と主張する。その潔さを含めて、新しさを感じた。

 「安さ」を実現するのにどんな工夫をしたのだろう。気になって茨城県の茨城空港を紹介するウェブサイトを覗いてみた。すると、おあつらえ向きに「ローコストへの取組み」という特設ページが設けられていた。

 まず、航空機が専用車の助けがなくても再出発できる自走式の駐機場を備えている。乗降時に機体と建物をつなぐボーディングブリッジ(搭乗橋)は管理費がかかるため利用せず、乗客はタラップを使って地面で乗り降りする。出発ロビーと到着ロビーも同じフロアに設けられている。いずれの工夫も航空会社が人件費や使用料の負担を抑えることにつながる。「さすが日本初のローコスト空港だけのことはある」と感心してしまった。

 さらに「コンセプト」のページでは、「安い」と銘打って、海外で成長著しいローコストキャリア(LCC、格安航空会社)の誘致を図っていることを大々的にうたっている。LCCのビジネスモデルに対応できる国内初の空港とも記している。

 空港ターミナルが「コンパクト」であることも強調する。鉄骨造2階建て(一部3階建て)、延べ床面積で約8600m2、幅約120m、奥行き約40mのターミナルビルは、「国内線・国際線の両方に対応した旅客ターミナルビルとしては日本最小規模」だという。設計 ・ 監理を手がけたのはターミナルビルには実績がある梓設計だ。施工は五洋・染谷・栗原・大成JVが手がけた。高所作業車を多用して、足場仮設の設置を最小限に抑えるなどして、実質で約11カ月という短工期を乗り切った。

 日航問題を始めとする航空業界の先行き不透明感や、公共事業に対する風当たりの強さがあるにせよ、「安さ」をここまでデザインしてくれたら腑に落ちる。