PPP(ピーピーピー)と言われてピンとくる人は、まだ少ないだろう。辞書でPPPを引くと、いくつかの言葉が出てくるが、ここで話題にしたいのはPublic Private Partnership(パブリック・プライベート・パートナーシップ)のPPPだ。日本では「官民連携」「公民連携」「官民協働」などと訳されている。

 小泉内閣時代の2002年には、経済産業省が「日本版PPPの実現に向けて」という報告書をまとめた。そこでは市場での競争を目的として、民間委託、PFI(Private Finance Initiative:民間資金を活用した社会資本整備)、独立行政法人化、民営化など、公共サービスの民間開放を目指した。

 時を経て政権が交代し、PPPに再び注目が集まっている。国土交通大臣に就任した前原誠司氏は成長戦略会議を招集し、09年11月16日の会議でPPPの検討を指示した。そのときの発言が、議事録に残されている。

 「実はきょう、事務方にPPP、PFIの検討を指示しました。要は公共投資をする際に、借金ばかりあって金がないわけです。それで、なかなか税金で公共投資ができない。そして維持管理もままならないという状況に、これから入っていくわけでありますけれども、世界を見渡したら、国家ファンド、ソブリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド)を含めて、あるところには金がある。そこで、例えば維持管理も含めて、PFIのやり方をもっとうまくやっていけば民間資本でできるので、別に税でやる必要はない。ましてや借金でやる必要はなくなります」

 PPPは幅広い概念だが、国交省が検討対象とするPPPは「資金調達」を強く意識したものであることが伝わってくる。

 先の成長戦略会議で前原国交相は、「最終的には国土交通省にとどまらないものになろう」と発言した。その言葉どおり国交省の成長戦略は、ほどなく政府の成長戦略に反映されることになる。政府が09年12月30日に発表した「新成長戦略」には、投資効果の高い大都市圏の空港、港湾、道路などの整備を実現する手段として、PFIやPPPを積極的に活用することが盛り込まれた。

 国交省の成長戦略会議におけるPPPのブレーン役は、野村総合研究所の福田隆之氏が務めている。福田氏は内閣府の「PFI推進委員会」にもオブザーバーとして参加。さらに、整備新幹線などの整備にPPP手法を用いることを検討する国交省の調査委員会(鉄道整備におけるPPP等による民間資金の活用方策に関する調査委員会)の座長にも就任した。

 福田氏は2月に掲載したケンプラッツのインタビューで、PPPの必要性を分かりやすく解説した。ざっくりとまとめれば、次のような話だ。インフラ整備に、従来のようにお金を使うことは難しい。世の中には、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品を求める投資家がいる。インフラを投資対象にできれば、民間資金を使った整備や維持管理に道が開ける可能性がある。