国土交通省は2月、地域の創意工夫に富んだ観光まちづくりの取り組み事例を選定し、「地域いきいき観光まちづくり2009」事例集を公表した。

 2007年6月に閣議決定した「観光立国推進基本計画」では、日本人1人当たりの国内観光旅行宿泊数を2010年度までに1泊延ばすことなどがテーマとなっている。事例集はその一助になると国交省は期待している。

 国交省はこれまでも、元気な観光まちづくりをコンセプトにした「地域いきいき観光まちづくり-100-」や、滞在力のあるまちや外国人で賑わうまちをコンセプトにした「地域いきいき観光まちづくり2008」を2年に1回のペースで作成してきた。

 過去の同種の事例集が地域別に編集していたのに対し、2月に公表した事例集は、取り組み課題別の編集に改めている。取り組み課題とは、例えば、「域内交通に係る取り組み」や「地域特性を生かした新たな客層の開拓」、「地域資源を活用した新たな取り組み」などだ。これから観光まちづくりに取り組もうとする人が、マニュアルとして活用できるように作成している。

 この事例集を見て、09年11月の行政刷新会議ワーキンググループのひとこまを思い出した。民間主体によるまちづくりの先進的な事例を、国が集めて整理するという業務についての仕分けの一面だ。仕分け人から「国がマニュアルを作ったからといって、それが自治体の役に立つのか」、「わざわざ国でやる必要はない」、「既に事例の蓄積がある。これまでの成果の活用にとどめるべきだ」などの意見が上がった。約1200万円のコストをかけてどれほどの効果があるのか、疑問を抱く仕分け人は多かった。結果は、「廃止」という判定だった。

 私も、わざわざ国交省が取りまとめなくてもよいという意見に賛同する。事例集の存在自体に異論はないが、国が多額のコストをかけてまでやるべき業務ではないと思うからだ。たとえ国が取りまとめるとしても、コストに見合った効果の検証が必要だ。例えば、事例集を必要とする人に確実に届いているのかどうかの確認などが考えられる。

 事業仕分けでは、「失敗事例をまとめてはどうか」という意見も上がっていた。そういったネガティブな事例は民間では集めにくいので、国が実施するというのはいいと思うのだが。