火災の多い季節だ。総務省消防庁の調べによると、2009年12月時点の住宅用火災警報器の推計普及率は、既存住宅を含めて全国で52%。防火にはあまり関心がなかった私だが、わが家でも“内輪もめ”の末に住宅用火災警報器を設置した。

 ことの発端は、マンション管理組合から送られてきた「住宅用火災警報器に関するアンケート」だった。既存住宅でも住宅用火災警報器の設置が義務づけられたことを受けて、自分で設置するか、団体購入するかと問うていた。管理組合が団体購入する住宅用火災警報器は、能美防災の「まもるくん10」。3500円の商品が2500円になるとの触れ込みである。工事費は別で、1個につき600円かかる。

 問題は設置数だ。妻は、納戸のような部屋まで含めて5個申し込むと言う。私は次のように答えた。「おまえ、だまされてるんじゃないの。確か寝室だけでいいんだよ。うちは台所に一つあるから、あと2個だ」。このとき私の頭には、以前、何かの広報で見た情報があった。

 妻は「だって管理組合の資料に全居室って書いてあるもん。ちゃんと読みなさいよ. マンションのみんなが付けるんだから、いいんだよ。信じなさいよ。あんたのそういうところが大嫌い」と言って譲らない。突き付けられた管理組合の配付資料には、確かに「全居室」と書いてある。

 私は「管理組合が、だまされているかもしれないじゃないか。住宅用火災警報器の訪問販売を名乗る詐欺事件だって、現実に起きているんだぜ」と、さらに反論。管理組合の資料だけでは納得できないので、改めて調べてみることにした。

 インターネットでたどり着いた政府広報には、確かに「ふだん就寝に使う部屋に設置する」と書いてある。念のため、総務省消防庁のウェブサイトに出ていた住宅用火災警報器相談室に電話すると、「自治体によって判断は違うから、詳しくはお住まいの自治体に聞いてください」と案内された。そこで東京消防庁に問い合わせると、てきぱきと教えてくれた。

 設置場所については、東京都火災予防条例施行規則の第11条8の2に、「住宅用火災警報器は、住宅内の各居室、台所および階段に設置する」と書いてあることが分かった。政府広報との違いを指摘すると、東京都では、より厳しく運用しているとのこと。さらに「居室の定義」を問うと、建築基準法から来ていると言う。建築基準法は第2条で、居室について「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう」と定義している。ついでに「継続的」の解釈についても聞いてみたが、「そこまでは決められていません」という説明だ。

 念のため、編集部にいた建築系学科出身の桑原デスクにも、この話をぶつけてみた。「建築基準法には“継続的使用”と書いてあるけど、結局、居室かどうかは自分で判断するということだよね」と。

 すると桑原デスクは「勝手に決めていいんですか。建築確認申請時に居室と判断された部屋のことではないですか。ちゃんと調べなきゃだめですよ」と、厳格なことを言うのだった。

 そこで、居室の判断について、改めて東京消防庁に問い合わせてみた。答は「実態に合わせて判断する」。つまり、建築確認時に居室として申請されていても、子どもが独立して物置になっている部屋は対象外と判断してもよい。居室か否かは、あくまで自己責任で判断することなのだ。

 ようやく疑問は解決したが、分からないこともある。住宅用火災警報器の設置義務に罰則はないものの、もし、居室ではないと判断した警報器のない部屋から出火し、周辺家屋に被害が及んだらどうなるか。訴訟になったとき、警報器がある場合と比べて高い損害賠償になるかもしれない。

 ちなみにわが家は、居住実態を踏まえて「当面3個」と決めた。設置された警報器のテストボタンを押すと、「ピー、ヒュー、ヒュー、火事です、火事です」と大きな音。睡眠中に火事が発生しても、逃げ遅れることはないだろう。