業界の勢力図が変わる可能性も

1月15日の記者会見に臨むYKK APの堀秀充・取締役上席常務(左)とビックカメラの加藤周二・取締役CSRO(写真:ケンプラッツ)
1月15日の記者会見に臨むYKK APの堀秀充・取締役上席常務(左)とビックカメラの加藤周二・取締役CSRO(写真:ケンプラッツ)

 基本協定はビックカメラ側が持ちかけた。内窓製品に占めるシェアの大きさと、工事の簡便さに着目した。「昨年の12月上旬から、一緒にやっていこうと準備してきた。極めて取り付けが簡単だ。ビックカメラの工事関係者が実施したところ、エアコンの取り付けよりも簡単だという声もあった。YKK APのプロモーション動画では1個1時間ぐらいだったが、もっと速くできるのではないか。技術的には問題ない」(加藤取締役)。

 加藤取締役は、省エネ内窓の販売見込みについて、「わからない。まずは、お客様に知っていただくことが第一。こうした商品に身近に接するのが初めての機会となる」と語り、商品の認知度を高めることに注力する姿勢を強調した。

 取扱商品は当面、省エネ内窓に限定する考えだ。YKK APの堀取締役は、「二重窓にするには、既存窓を取り替える場合と、今ある窓に新しく内窓を付ける場合がある。工事の難度の問題もあって、今回は内窓のところから始めた。外窓については専門的な工事が必要になり、今後の課題だ」と語る。

 この日、YKK APの吉田忠裕社長とビックカメラの宮嶋宏幸社長は、経済産業省の近藤洋介政務官に基本協定の締結を報告。近藤政務官からは、「住宅分野の省エネ、CO2削減は政府全体でも重要な分野。家電販売店という消費者の方と接する新しい流通チャンネルができたということは、政策、予算の効果を高める上で期待ができる」と激励されたという。

 「お互いに束縛しない」。YKK APの堀取締役とビックカメラの加藤取締役は口をそろえる。両社は将来、別のメーカーや家電量販店と提携する可能性を否定しなかった。報道では、他のサッシメーカーと家電量販店の提携の動きも報じられている。住宅版エコポイント制度のスタートは、業界の流通チャンネルを変え、勢力図を塗り変える契機にもなり得る。

 2009年の新設住宅着工戸数は、45年ぶりの80万戸割れとなる可能性が高い。苦境が続く建材・設備メーカーが、住宅版エコポイント制度に寄せる期待感は高い。家電量販店での販売が、消費者のエコリフォームへの関心を高める起爆剤となるか。補正予算成立後の制度スタートを見据え、異業種を巻き込んだエコポイント争奪戦が始まっている。