地下に快速線、需要を見極め着工

 調査報告書は、三鷹・立川間立体化複々線促進協議会がまとめた。現状の中央線について、1)速度が遅い、2)立川で分岐する青梅線との直通運転が少ない、3)混雑が激しい――と3つの問題点を挙げている。複々線化でこれらを解消する。

 速度については、停車時間などを含めた平均を表す「表定速度」が遅い点を指摘している。立川から新宿までは時速43.2kmであり、東海道線の74.6kmや東北・高崎線の62.2kmなどと比べて低い。青梅線との直通運転は、中央線の運行形態が八王子方面を優先していることから、制約を受けている。混雑率は年々下がっているものの2005年で211%と、依然として目標値の180%を超えている。

路線名 区間 表定速度
中央線 立川→新宿 43.2km/h
東海道線 横浜→品川 74.6km/h
総武線 津田沼→東京 54.9km/h
常磐線 柏→上野 60.0km/h
東北・高崎線 さいたま新都心→上野 62.2km/h
速度の比較。中央線は他の4方面の路線と比較して遅い。表定速度とは停車時間なども含めた平均速度のこと (三鷹・立川間立体化複々線促進協議会が作成した資料を基にケンプラッツが作成)
朝ラッシュ時の直通運転状況。中央線新宿方面の輸送力に限界があり、立川で分岐する青梅線への直通運転は制約を受ける (資料:三鷹・立川間立体化複々線促進協議会)
朝ラッシュ時の直通運転状況。中央線新宿方面の輸送力に限界があり、立川で分岐する青梅線への直通運転は制約を受ける (資料:三鷹・立川間立体化複々線促進協議会)
混雑率の推移。年々下がりつつあるものの、快速線では目標の180%までは下がっていない (資料:三鷹・立川間立体化複々線促進協議会)
混雑率の推移。年々下がりつつあるものの、快速線では目標の180%までは下がっていない (資料:三鷹・立川間立体化複々線促進協議会)

 連続立体交差化も複々線化も、1994年5月に都市計画決定している。連続立体交差化は東京都が事業主体となり、99年に工事が始まった。複々線化は一般に鉄道事業者が事業主体となる。中央線を運営する東日本旅客鉄道(JR東日本)は同区間の複々線化について、「将来の需要を見極めたうえで着工する」(総合企画本部投資計画部の関口司課長)と表明している。JR東日本にとっては、投資に見合う利益が期待できないことから、現段階で工事開始の予定はない。

 協議会としては、こうした状況から一歩踏み出したい。まずは事業に意義があることを定量的に確認するため、今回の調査を実施した。調査のための専門委員会(座長:岩倉成志・芝浦工業大学教授)に、JR東日本も参加した。「JR東日本が加わったことで有意義な検証となった」(立川市都市整備部都市計画課の栗原洋和課長)。

 複々線化の計画では、新たに増やす上下線は基本的に現行線の地下に快速線(急行線)として建設する。三鷹と立川では、高架線を両脇から挟む格好で上下線がそれぞれ地下に潜る。国分寺-西国分寺間はスペースに余裕のある掘割になっていることから、現行線に快速線を併設する。4線を並べ、内側の2線を快速線にする。快速線を走る列車は途中、国分寺にだけ停車させる。