現在の洋式便器は座りションに向くか?

 ところで、「座ってする」派の一人として言っておきたいことがある。現在の洋式便器の多くは座りションに向かないのではないかということだ。

 恥ずかしい話だが、ちょっと油断すると、小用中に尿が便器前方の外に漏れてしまうことがある。座り方が悪いのか、あるいは便器の前後長が短いのか――。ただ、便座に深く座れない子どもはよく尿を垂らして床を汚しているようだし、公共トイレでもたまに目にする事象でもあるので、私に限った粗相ではないと考えている。

 便器メーカーは、座りションに対応した洋式便器を開発できないものか。便座を下ろしたときに便器と便座のすき間をなくす、便器前方のふちを小便が越えないような形状にする――など。「座ってする」派の粗相を減らす工夫を最新の便器に盛り込んでもらいたい。

 一方、トイレの設計や施工についても、座りションを前提に考えると課題が見えてくる。最近のトイレの床は、居室や廊下などと同じ材質で仕上げて空間の一体感を演出することが多い。バリアフリーの観点からも、床材が同じであれば下地調整の必要はなくなる。だが、トイレの床が居室などと同じ木質系フローリングの場合、便器と便座のすき間から飛び出した尿が、便器の前方表面を伝って床に流れ落ちるとやっかいだ。フローリングの継ぎ目に尿がシミをつくることもある。

 NPO法人日本ホームインスペクターズ協会は、木造住宅で劣化しやすい部位として、水まわりの床下を挙げている。例えば、浴室のドア枠と脱衣室の床の取り合い部にすき間があると、そこから水が染み出して床下の木部をぬらす。床下の湿度が高い場所では、上から染みてきた水がきっかけになり、カビやシロアリの被害を広げることもあり得るという(詳しい記事はこちら)。

 日本ホームインスペクターズ協会の警鐘は、トイレにも当てはまる。座りションが定着しつつあるなか、トイレの床材をどのような仕様にするかは重要な項目だ。デザインを考慮したうえで、アンモニア、水、洗剤などの液体に強い床材を選定したい。

 例えば、床が一般的なフローリングではなく、特殊加工したフローリングやクッションフロアであれば、多少の汚れはふき取ることができる。また、防汚機能を持つ大型セラミックタイルなどを便器まわりに敷いておけば、フローリングの継ぎ目に尿が染み込むことは避けられる。床下の木部を保護するために、防水機能を持った下地材を採用する手もある。

 TOTOの調査では、「座ってする」派の理由として「姿勢が楽」を挙げる人も多かった。その傾向は年代が上がるほど顕著だった。これからは、住まい手に高齢者がいる場合は特に、座りションに配慮したトイレを提案する必要がありそうだ。