この夏、NA選書「照明ガイド」の編集に携わった。建築専門誌「日経アーキテクチュア」に掲載してきた近年の記事の中から、照明関連の記事をピックアップして、書き下ろしの原稿なども加えながら再構成した本だ。頭の中が久々に「照明一色」になった。

 「照明」は今、大きな変革期を迎えている。それが実感だ。省エネルギーが叫ばれるなか、CO2の排出量を抑制する、環境にやさしい新しい光源が続々と開発され、従来の光源との代替が積極的に進み始めている。ただし、LEDに代表される新しい光源は、従来の光源とは、特性や光の質が異なる。LEDを例にとれば、小型で軽い点や指向性が高いこと、紫外線が少ないといったメリットもある。その一方で、照明として使いこなすにはまだまだ未成熟な部分が多いことも、本を取りまとめていく中で分かった。

 編集の一環で、現場の照明デザイナーにLEDの使い勝手を尋ねる機会も増えた。以前に比べると、食わず嫌いの照明デザイナーは減り、LEDを活用している人が多くなった。だが、「製品にまだバラツキがあり、狙ったとおりの効果が得にくい」ことや、「設置してからの不点灯に悩まされる」「照明器具の背面での熱処理が課題だ」といった声が相変わらず挙がってくる。多くのデザイナーが、自ら光の状態を個別の光源ごとに確かめるなど、苦労をしながら導入を進めているのが実情だ。

 例えば、照明デザイナーの岡安泉氏は、LEDの特性自体を正確に評価するために自ら、国内外の各メーカーのLED製品の演色性をJIS(日本工業規格)に沿って測定するといった取り組みをしていた。その結果、測定値と実際の見え方の印象には差があったという。「LEDは従来の光源と同じ方法では、正確に測定できないのではないか」と分析している。新しい規格が必要なのではないかとも訴えていた。

 新世代照明の登場で照明計画は大きく変化する。光源の種類が増えることによって、照明の計画手法のバリエーションが、これまで以上に増えるからだ。新たな光源を採用していくに当たっては、従来の光源との代替や組み合わせの場面を想定して、照明の基本知識を再度、勉強しておくことが大切になる。基本手法なくしては、新しい照明器具などを使いこなすことは難しいからだ。

 そうした考えから、NA選書「照明ガイド」では、照明全般の知識が身につくノウハウを第一部に、新世代照明の活用法が分かるトレンドや事例を第二部にまとめる構成とした。我田引水にはなるが、照明デザイナーの面出薫氏も、「新しい光源の可能性をいかに切り開いていくか、同時に、人間が長く付き合ってきた太陽光や火の光とどう向き合うか。2つの視点を常に意識しつつ、光のデザインに取り組んでいくことが大切だ」と語っている。

 この視点は、建築や住宅、インテリアや都市といった様々な空間を「照明で彩る」人たちにとって、これからのエコ時代を乗り切るためにも欠かせないものだと考えている。NA選書「照明ガイド」が、時代のニーズにマッチした快適な照明を計画していくための一助になれば幸いだ。