長野県飯田市の経済団体を中心に構成するリニア中央新幹線飯田駅設置推進協議会など3者が共同で9月26日、リニア新幹線に関するセミナー・シンポジウムを開催した。不肖ながら筆者が講師として呼ばれ、リニア新幹線の工事費や維持費について第三者として解説した。当日の内容をお伝えする。

9月26日に飯田市公民館で開催した「夢のリニア中央新幹線セミナー・シンポジウム in 南信州」。主催は、リニア中央新幹線飯田駅設置推進協議会、飯田商工会議所リニア中央新幹線特別委員会、南信州新聞社の3者。写真は第2部シンポジウムの様子 (写真:南信州新聞社)

市民の熱い思い、民主党の動向に注目集まる

 リニア新幹線のルートを巡っては、事業者側のJR東海と経由地の長野県で思惑が交錯している。

 JR東海は、路線長が最短の南アルプスルートを前提に建設する考えを貫いている。これに対し長野県は、諏訪経由で経済効果の見込める伊那谷ルートを強く求めている。伊那市長が県に対して経済効果の試算を求める考えを示したり、民主党長野県連代表の北沢俊美防衛大臣が伊那谷ルートを推進する姿勢を示したりするなど、対立色が強くなりつつある。

 ただし、すべての県民が伊那谷ルートを支持しているわけではない。県南部の飯田・下伊那地域では、南アルプスルートを求める声が強い。飯田・下伊那地域はどちらのルートでも経由地になるものの、伊那谷ルートでは地域内には駅が設けられないかもしれないと気をもんでいる。

 こうした住民の意識を背景に、一連の行事が定期的に開催されている。今回のシンポジウムでは、市民がリニア新幹線に対する熱い思いを、パネリストにぶつける一幕があった。質疑応答の際に、南アルプスルート推進をもっとはっきり訴えてほしいと懇願した。協議会の会長でもある飯田商工会議所の宮島八束会頭は、他地域に配慮して回答する一方、市民と思いを共有しているようにも感じた。

 民主党の動向にも関心が集まった。同党所属の加藤学衆議院議員がパネリストとして状況を説明した。リニア新幹線について党内では、国土交通省やJR東海との関係を含め、構想が固まっていないのだという。伊那谷ルートを求める北沢氏の考えについては、県議を5期務めた経験から出てきた発言と思われ、党の決定ではないと説明した。加えて加藤氏個人の主張として、県は伊那谷ルートありきではなく南アルプスルートも選択肢の一つとして捉えてほしいと訴えた。