既存不適格建築物に増築する際、増築部分をエキスパンションジョイント(以下、Exp.J)で構造上、分離すれば、既存不適格部分に現行の構造耐力規定(以下、現行規定)を遡及適用して改修する必要はない――。「○」か「×」か?
 答えは、「×。ただし、例外がある」だ。

 2005年の建築基準法改正で、既存不適格建築物の増改築に関する基準は緩和され、現行規定に適合させなくても済む例外が認められた(法86条の7、施行令137条の2、05年国交省告示566号)。(1)増築部分の面積が既存部分の延べ面積の2分の1以下で、(2)Exp.Jで接続しているなど、増築部分が既存部分と構造上、分離しており、(3)耐震改修促進法の基準による耐震診断で安全性が確認できる――という条件を満たせば、例外扱いを受けることができた。

 さらに国交省は今年8月10日、05年国交省告示566号を改定し、この例外の範囲を広げた。1981年施行の新耐震基準に適合している建築物は、上記の(1)と(2)を満たしていれば、(3)の耐震診断による安全性の確認を不要とした。9月1日以降、建築確認を申請したものから、この措置を適用している。

 しかし、「05年の建基法改正で、Exp.Jで構造の縁を切っている場合の“例外”を認めたことは、既存不適格建築物の増改築基準の緩和ではなく、事実上の強化だった。新耐震の建築物で耐震診断が不要になっても、解決できない問題がなお残る」という建築実務者の恨み節も聞かれる。

 法改正による「緩和」が、なぜ設計の現場では「強化」と見られたのか。「解決できない問題」とは何なのか。