8月30日に投開票となる衆院選まで2週間足らず。各党のマニフェスト(政権公約)の内容が連日、多くのメディアで報じられている。ケンプラッツでも、公共事業や住宅にかかわる自由民主党と民主党の公約をそれぞれ比較している。
住宅などの建築分野では、両党とも既存の施設を対象とした改修や補強をマニフェストに明示。住宅のリフォームや校舎などの耐震補強の支援を挙げている。
一方、土木構造物の維持管理や補修にはあまり言及していない。両党とも、直轄事業における維持管理費の地元負担金の廃止を公約に挙げながら、道路や河川などの社会資本をどう管理していくかの具体的な将来像は示していない。
例えば自民党が維持管理に触れたのは、上下水道の分野。維持管理を通して、「資源の循環・再利用も含めた水循環プロセスが安定的かつ健全に行われる社会を構築する」としている。
民主党はマニフェストの冒頭で、「コンクリートではなく人間を大事にする政治にしたい」と述べたうえで、「高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する」としているが、どのように「有効に使う」かの記述は見当たらない。
主要政党の中で、維持管理について最も詳細に記述したのは公明党。「長寿命化計画の制定や予防保全などの計画的な実施を推進。戦略的な維持管理体制を構築する」とし、すべての社会資本ストックに非破壊検査を導入する考えを述べている。ほかに社会資本の老朽化を取り上げているのは、改革クラブぐらいだった。
(財)建設経済研究所などが7月23日に発表した予測によれば、2010年度の建設投資の見通しは44兆1700億円と約30年前の水準に戻る。政府建設投資も16兆7300億円と、補正予算で急増した09年度に比べて13.6%減少するという。
財源が限られるなか、維持管理と建設とのバランスにこれからどう配慮するべきか――。
自民党はマニフェストで「真に必要なインフラの整備」を掲げ、民主党は「必要な道路を造る」と述べている。しかし、社会資本の現状や将来をどれだけ把握したうえでの公約なのかは疑問。目先の事業だけでなく、維持管理を踏まえた社会資本の展望を示すことも必要ではないか。