建設業許可訴訟を巡る裁判所の判断

 訴訟の争点は、虚偽申請を見抜けずに建設業許可をしたことが違法な行為に当たるか否かだった。ポイントになったのは、県が作成した「建設業許可の手引き」だ。手引きでは、専任技術者が常勤していることを確認する手段として申請者が提出する書類を目安として定めている。住民票、直近3カ月分の出勤簿や給与明細書、本人の健康保険証または雇用保険証などだ。

 原告側は、専任技術者が建築設計事務所を営んでいたこと、申請書類が不十分だったことなどを挙げ、形式的な審査だけで実態調査を怠ったなどと主張した。建設業法は発注者保護を目的に改正を重ねているとも指摘。「許可要件についてチェックを手引きによって緩やかに解釈して許可してしまったもので、違法性がある」と主張した。

 被告の県側は、専任制の確認は許可権者の個別の判断に任されていると主張。手引きに記載する提出書類は例示であって、専任制が確認できる書類の提示などが申請者から行われれば、それ以上の書類の提示を要求する理由はないなどとした。また、「許可が結果的に誤っていたことは事実だ」としつつ、「後になって虚偽の記載が判明したからといって、直ちに許可が違法だとか、許可に過失があったということにはならない」と主張した。

 裁判所は判決で、建設業法の第一の目的は、適正な施工を確保し、発注者を保護することだと言及した。その上で、県が申請者から20日間程度の出勤簿しかないと言われ、その書類だけしか確認せずに許可した手続きに問題があったと指摘。「審査を尽くしたといえず、国家賠償法1条1項の違法性が認められる」と判断した。さらに、許可と原告の損害の因果関係を認め、「法の目的や趣旨からすれば、本件のような事態を想定して許可制としたというべきで、知事が許可した当時、原告の損害を予見できた」として被告の主張を退けた。

 原告側の損害については、請負金額や撤去工事代金など約675万円を認定。施工者との和解金100万円を差し引いて賠償額を決めた。