ゼネコンの2009年3月期の連結決算には、苦しい経営の現状が表れている。主要30社の業績を見ると、売上高は22社が前期(08年3月期)を下回った。純損益は11社が赤字、17社が減益だ。

 大手4社のなかでは、鹿島と大成建設が赤字に転落。準大手以下では、五洋建設、三井住友建設、フジタ、熊谷組、東急建設、奥村組、大豊建設、青木あすなろ建設、若築建設が赤字を計上した。

 住宅投資の低迷、民間設備投資の抑制、海外工事の採算悪化、新興不動産会社の経営破綻に伴う損失処理・・・。決算短信をめくると、ため息をつきたくなるような文言ばかり並んでいる。

ゼネコン主要30社の連結業績 (クリックで拡大)

 「いまは利益がプラスになるだけでいい」(ゼネコンの経理担当者)という環境下で、純損益が黒字だった企業は19社。ただし利益水準は総じて低い。売上高営業利益率が3%を超えたのは、東鉄工業と矢作建設工業の2社だけだ。

 東鉄工業は不採算工事の排除など、利益改善のための取り組みが実を結び、売上高営業利益率5.1%(前期は4.2%)を確保。矢作建設工業は、耐震補強事業や設計・施工一貫型のマンション事業などが好調で、売上高営業利益率7.1%(前期は5.2%)を達成した。マンションが売れないといわれるなか、同社グループの販売戸数は前期の実績を大きく上回っている。

 「企業の成績表」といわれる決算短信だが、その記述内容には、分かりやすいものと分かりにくいものがある。経営方針について、「収益力強化」「合理化」などの表現で済ます企業があれば、「いつ」「何を」を具体的に示している企業もある。一般論的な記述に終始する企業は、手の内を見せたくないのかもしれないが、市場から「策がない」と受け止められる危険もある。その点、先の東鉄工業と矢作建設工業の決算短信は、戦略や手段が明記されていて、分かりやすかった。

 さて、今後の経営環境については、「景気対策としての公共投資が期待できるものの、中長期的には公共投資は低調に推移」「民間設備投資は抑制傾向が続く」といった厳しい見方が多勢を占めている。10年3月期の業績は、30社中20社が減収の見通しだ。