鹿島がミツバチを指標とした生態系配慮型の緑地計画作りを始めるという。ミツバチは植物の受粉を媒介するので、ミツバチの行動範囲を調べることで、タンポポなどの植生分布を知ることができる。同社は、都市の再開発で野鳥のコゲラが休息できる緑地の確保などを民間会社に提案した実績があり、地域生態系に配慮しながら効率的に緑地化に取り組んでいる。

 このように、建設業界が取り扱う仕事の裾野は広がりつつある。4月10日号の日経コンストラクションの特集「土木復権」でもそれらの話を取り上げた。ただし、広がりつつある分野を亜流と捉える建設技術者は少なくない。

 以前、建設業界における生物多様性についての講演会が開催されたときの話だ。建設業界における生物多様性が新たなビジネスチャンスになりうる可能性を感じ取れた面白い講演会だった。その会の最後に、参加者から建設会社の講演者に次のような質問が出た。

 「あなたは現場を何年経験したのか」。

 質問内容は生物多様性にまつわる話ではなかった。質問した人は建設会社で現場を長年経験してきた人だ。その話を聞いていると現場至上主義といった感じだった。

 建設技術者が現場を知らないでという思いは誰にでも共通する話だろう。しかし、だからと言って「現場をあまり経験していない人が、生物多様性の考えを建設分野に持ち込むのはどうか」と言わんばかりの態度はちょっと残念だった。建設的な意見交換が、これからの建設分野の可能性を広げる。ここでの現場経験はまた別の次元の話だと思うのだが。

 生物多様性だけでなく、新エネルギーなど、建設に関連する新しい波はすぐそこまで来ている。建設技術者は自分の専門分野を極める姿勢はもちろんのこと、これからの時代の変化に柔軟に対応できる考え方と姿勢が求められている。