建物や社会インフラの利用者満足度が高まることによって、建設・不動産業が社会から高く評価されることを願う私は、毎年春に発表される大学生の就職人気ランキングの結果を気にしている。まだ、世間を熟知していない学生の評価とはいえ、社会の動きを反映している面があると思うからだ。

 3月に発表された毎日コミュニケーションズの大学生就職人気ランキングの理系部門上位100社を見ると、建設分野の企業は今年も上位20位以内に入らなかった。以下のような順位だ。

 24位:積水ハウス
 33位:大成建設
 35位:住友林業
 37位:竹中工務店
 45位:大和ハウス工業
 46位:鹿島
 59位:一条工務店
 75位:清水建設
 85位:大林組

 4月にはリクルートが、大学生の就職志望企業ランキングを発表した。「大学生 理系」の上位50社に名を連ねた建設系企業は、住友林業、積水ハウス、一条工務店、大和ハウス工業。ゼネコンの名はなかった。

 毎日コミュニケーションズは上位50社について、学生の選定理由も公表している。これを見比べてみると、ゼネコンの評価が高いのは「業界上位である」や「技術力が高い」といった項目だ。住宅メーカーと比べると、「国際的な仕事ができる」という項目の評価ポイントが高い。しかし、会社ごとの違いは見えにくい。これもゼネコンに対する評価の特徴である。

 住宅メーカーのなかで、個性を際だたせているのは住友林業だ。「環境問題に前向きである」という項目で、ずば抜けて高い評価を得ていた。「やりたい仕事ができそう」や「社風が良い」「将来性がある」の項目でも、得票数が多い。一方、積水ハウスや大和ハウス工業は「業界上位である」「広告・宣伝がうまい」「企業イメージが良い」という項目で住友林業を上回っている。

 実情はともかく、学生の見方が示されていて面白いので、毎日コミュニケーションズの昔のランキングをたどってみることにした。すると、ゼネコンにも何度かの黄金期があったことが分かった。

 ゼネコン人気が高かったのは1993年~2000年だ。97年には清水建設が5位で、上位20位以内にゼネコン4社の名がある。翌98年は鹿島が6位で、やはり上位20位以内にゼネコン4社が入っている。2000年は7位鹿島、10位竹中工務店、11位清水建設といった順位だ。この時期、日本では大きなプロジェクトがいくつも進行していた。97年には東京湾アクアラインが完成、98年には明石海峡大橋が開通した。2000年は六本木ヒルズの工事が始まった年でもある。

 さらにさかのぼると、青函トンネルを題材にした映画「海峡」が公開された翌年の83年も、ゼネコンの人気が高い。鹿島8位、大成建設8位、清水建設10位、大林組17位という順番だ。日本の注目プロジェクトが、学生のゼネコン志向を後押ししていた面があるのだろう。この時期、建設系の学生の多くは、将来、建設の仕事が減るなんてことはほとんど考えずに、学校推薦をもらって建設分野に進んだ。そう断言できるのは、筆者もそのうちの一人だからだ。

 過去のランキングを見ていて、大手ゼネコンの順番にも動きがあることに気づいた。92年までの、ゼネコンの一番人気は鹿島だ。ところが93年には清水建設が鹿島を抜いて理系の総合4位に躍り出る。そして97年まで、ゼネコンの人気1位は清水建設だった。98年には鹿島が再び清水建設の上に立つ。だが、その鹿島でさえ、2000年の7位を最後に、ランキングの20位以内から名前が消える。

 建設投資の抑制、注目プロジェクトの減少、相次ぐ談合事件によるイメージの悪化など、ゼネコンの人気が低迷した理由はいくつかありそうだ。たかが人気投票だが、突き詰めれば社会において建設産業が必要だと思われる度合いが、ランキングに反映されているように感じる。

 今後、ゼネコンが昔のような人気を取り戻すのは難しいだろう。「社会貢献度が高い」「社風が良い」「環境問題に前向きである」「将来性がある」「技術力が高い」といった項目で、突出した評価を得る企業が出てくることを願っているのだが・・・。