2025年の開業を目標に建設ルートの選定などが進むリニア新幹線。中間駅の設置場所とともに関心を集めているのが、東京側の始発駅についてだ。

 JR東海は現段階で、品川駅を始発とする方向で最終調整を進めている。品川駅周辺はめまぐるしい発展を遂げているものの、東京の中心といえばやはり大手町・丸の内・有楽町の近辺だ(大丸有地区)。最大多数の最大幸福を追求するなら、東京駅を始発にするのが良さそうに思える。

 JR東海はなぜ始発駅を品川とするのか、その選択は適切か、東京駅が始発となることはあり得るのか――。都内に設ける駅について解説する。

東海道新幹線も乗車できる駅が候補

 JR東海がリニア新幹線の具体的な事業計画を発表したのは2007年12月25日のこと。東京側始発駅の設置場所については、利用者がリニア新幹線と東海道新幹線を選んで乗車できるようにするとの考えから、当初は東京、品川、新横浜の3駅を候補に挙げていた。

 両新幹線を選べるようにする理由は、同社が両新幹線を一体のサービスとして運営していくからだ。5兆1000億円という巨額の事業費を調達し、リニア開通後に乗客激減が予想される東海道新幹線の経営も成り立たせるために、必要な考え方だ。

 同社はリニア新幹線を東海道新幹線のバイパスと位置づけている。例えば、リニア新幹線に定員以上の利用者が集中したり、運行上のトラブルが発生したりした場合に、東海道新幹線をバックアップとして機能させる。逆に、東海道新幹線を部分的に運休して大規模修繕するとなれば、リニア新幹線が必要になる。

リニア始発駅の候補を比較
始発駅 利便性 建設しやすさ
東京 ・都心の中心 ・地下構造物が多い
・地上アクセス部分の設置が困難
・他社との調整事項が多大
品川 ・新拠点の中心
・東京駅から約10分
・地下構造物が少ない
新横浜 ・横浜市新横浜都心の中心
・東京駅から20~40分
・地下構造物が少ない
利便性と建設しやすさとの兼ね合いから、JR東海では品川をリニア新幹線の始発駅にする方向で最終調整している (資料:ケンプラッツ)

 候補3駅のうち、新横浜は東京の都心から離れている。東京都心から名古屋まで乗り換えが不要な東海道新幹線に比べると不便だ。乗客の利便性を考えるなら、東京か品川という選択になる。利便性では東京が勝るものの、建設のしやすさを考慮すると品川が現実的なのだ。

 東京駅周辺は既に地下鉄や高速道路、地下街などがひしめき合っている。それらを避けるだけならホームを大深度に建設すればよい。しかし、ホームへのアクセス手段となる階段や昇降機などの入り口を、駅構内にどう設置するのか課題が残る。切符売り場や改札口は東海道新幹線のものが流用できるだろうが、それでも利用者の動線上、新たな設置が必要になるかもしれない。

 現状の東京駅はコンコースが網目のように広がっており、大勢の利用者で混み合っている。東海道新幹線の直下ならJR東海が自由に使えるかに思えるが、そう単純な話ではなさそうだ。多くが通路などとして、複雑に入り組む形で使われてしまっている。まとまったスペースを確保するのは、容易ではない。