住民への説明や提案が、いよいよ入札時の評価対象になり始めた。北海道開発局が3月31日に公告した国道230号の交差点工事から試行を始めるもので、「住民参加型総合評価事後審査落札方式」という。

 従来の総合評価落札方式のプロセスに評価値上位3者による地元住民へのプレゼンテーションを加え、住民への配慮や地域貢献の内容などを説明。プレゼンテーションを聞いた住民が、工事を任せたい企業に投票する仕組みだ。

 一方で、「発注者から『何が書いてあるのかわからない』と言われた」。総合評価落札方式の入札で、特に地方の建設会社からこのような悩みを聞く。

 提案した技術に対する発注者の理解力が問題なのではなく、文章自体がわかりにくいようだ。発注者いわく「もっとわかりやすく書いてほしい」と。

 技術力の評価の過程が不透明などといった課題があるとはいえ、記述した内容が正確に伝わっているかどうかも考える必要がある。いくら技術力があっても、それが提案書で伝わらなければ「技術力がない」ことになってしまう。

 建設会社の技術提案書をいくつか拝見したところ、「わかりやすさ」という面から気になる点が少なくなかったので、主に表現方法について以下に記してみる。

(1)文字が小さくて詰め込みすぎ
 限られた枚数の中で、あれもこれもと詰め込むのは逆効果。一目で読む気がなくなる。レイアウトや字体、文字の大きさにも配慮する。

(2)重複感が強い
 小さな文字で詰め込んでいる割には、同様の表現や同じ文章が何度も出てくる。途中で読み飛ばす発注者もいるかもしれない。

(3)「技術論文」では読まれない
 一般的な技術論文に見られる「はじめに」から始まり「おわりに」で終わるような構成ではポイントが伝わりにくい。要点をできるだけ先に示す。

(4)図表や写真を効果的に
 文字ばかりでは伝わりにくい面もある。図表や写真を用いた記載が認められている場合は、それらを効果的に使うことで理解しやすくなる。

(5)効果の記述にこだわる
 施工手順の説明だけでは差がつきにくい。その技術や方法にどんなメリットがあるのかを知りたい発注者は多い。効果の記入欄が設けられている場合は、欄の大きさにも気を配って記入する。これは、住民への説明でも効いてくる。

 以上の5点は、記述によって表現する入札方式を主に想定したが、冒頭で取り上げた住民へのプレゼンレーションでも基本は同じだ。読み手や聞き手(発注者や住民)の立場で考えることが、ますます重視される時代になったと言える。

 この技術提案の過程で培った「説明力」や「表現力」は、これからも様々なケースで生きてくるはずだ。

 例えば技術士の試験では、自身の技術力や経験を論文でうまく表現できずに不合格となる人が多い。コンクリート診断士の試験でも、記述式で不合格となる人が少なくないという。

 さらに受注や資格の取得以外にも、例えば建設産業の魅力を社会や周囲に伝える際に役立つかもしれない。

 総合評価落札方式の見直しは今後も進むと思われるが、この方式の本当のねらいは、実は「建設産業の表現力を高めることにある」――とは考えすぎか。