「住まいや建築物がもっと安全、安心に。新しい建築士制度がスタートしました。」と題した新聞広告を皆さんはご覧になっただろうか? 一般社団法人 新・建築士制度普及協会が3月25日から28日にかけて新聞各紙に掲載した「新しい建築士制度」の広告である。全国紙5紙には5段組で、地方紙47紙には7段組で、建設専門紙3紙には1頁全面で掲載された。

 広告の目的は、構造計算書偽装問題を契機に大きく揺らいだ住宅・建築物の安全性に対する国民の信頼を回復することだ。広告の中には、次のような文言が並んだ。

■ 定期講習の受講義務づけなど、建築士のレベルアップを図ります。
■ 建築士が建築主に対し契約前に重要事項について書面を交付し説明するなど、建築士事務所が行う設計業務の適正化を図ります。
■ 建築士会に加え、建築士事務所協会が新たに建築士法に位置づけられ、これらの関係団体が建築士および建築士事務所の信頼回復をバックアップします。
■ 設計業務の適正な報酬算定の目安となる業務量を示した新しい業務報酬基準が策定されました。

 また、地方紙には各都道府県の建築士会会長と建築士事務所協会の会長の顔写真とコメントが、専門紙には建築士会連合会の藤本昌也会長と建築士事務所協会連合会の三栖邦博会長の顔写真とコメントを掲載していた。

 建築士制度に関する新聞広告は珍しい。これだけ大々的にアピールしたことは前代未聞だ。新・建築士制度普及協会は、「新しい建築士制度を広く浸透させる目的で、協会設立当初から新聞広告も視野に入れて検討してきた」という。

 同協会は、2008年11月28日に施行された改正建築士法に基づく建築士制度を、建築士のみならず広く国民一般に浸透させるため、建築士制度に関連する9団体を会員として2009年1月19日設立された。一定の建築物に対する構造/設備設計一級建築士の関与が2009年5月27日から適用されることに伴って、「資格者の紹介、相談体制の整備その他のサポート業務」にも取り組んでいくという。

 さて、ここからはこの広告についての個人的な感想を記す。まず、建築士制度について類例のない大々的なアピールをしたことは、“実験”としての意味合いを含めて評価したい。実験として、と前置きを置いたのは、新聞広告の反響を含めた“効果測定”をしてもらいたいからだ。国からの補助金をベースに年度末に間に合うように数千万円の広告費を投じた。「国土交通省にお伺いを立てた上で決めた」そうだ。国民の血税を使っている以上、国民の信頼につながらなければ、何の意味もない。

 二つ目は、広告としての“出来”だ。これは正直、ピンとこない。「安全、安心」を意識したせいか、イラストが“詩的”に過ぎる。新聞広告としてはインパクトがなく、訴求力に欠ける印象を抱いた。紙面に載せるよりも、チラシとして配った方がよかったと思える仕上がりだった。

 上記は、あくまで記者の個人的な見解だ。まったく別の見方もあるだろう。読者の皆さんの目には、どのように映ったのだろうか。新聞広告を見たうえでの意見や、住まい手からの反響などがあれば、教えていただきたい。