今年10月以降に引き渡される新築住宅には瑕疵保険への加入か供託による保証が義務付けられる。これで安心と言いたいところだが、住宅の建て主と住宅会社との間で瑕疵保険をめぐるトラブル――具体的には「保険が下りる、下りない」をめぐるもめ事――が発生するのではないかと心配している。理由は消費者への周知不足というか、瑕疵保険のイメージと現実とのギャップだ。

 ある保険の専門家は新たに義務付けられる瑕疵保険について「一般的な瑕疵のイメージに照らすと、保険がカバーするのはごくごく一部。消費者は誤解する恐れがある」と強調する。例えば民法に基づく社会通念上の住宅の瑕疵には、床鳴り、結露、カビ、色ムラをはじめ、外壁や外部建具の変形・破損、内壁や内部建具の変形・破損、給排水設備の漏水や排水不良、電気・ガス器具の取付不良や作動不良などの「不具合全般」が含まれるという。

 しかし、住宅瑕疵担保履行法によって義務付けられる瑕疵保険が対象とするのは「構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分」。原則として地盤は対象外だし、施工不良や不具合のすべてをカバーするわけではない。また、富士ハウスの破産で問題になったように、完成前に住宅会社が破綻したようなケースも「瑕疵保険」の対象にならない。

 こういった情報が消費者に周知されているとは言いがたい。国土交通省が今年1月19日に公表した消費者アンケート結果によれば、今後3年以内に住宅の取得を予定している建て主候補2367人に「住宅瑕疵担保履行法について知っていますか」と聞いたところ、「法律の内容まで知っている」と答えたのはわずか9.1%にとどまった。

 予備知識なしに「瑕疵に対する保険が義務付けられましたので安心です」と聞けば、施工不良や不具合を幅広くカバーするものだと早合点してしまう建て主も現れるだろう。住宅の実務者はわが身を守る保険という意味でも、顧客に対して「瑕疵保険の性格と限界」をできる限り丁寧に説明しておいたほうがよさそうだ。