国はいま、「200年住宅」というキーワードの“回収”に頭を悩ませている。福田康夫前首相が総裁選挙の演説で触れたことなどで脚光を浴び、その後、キーワードとしてのわかりやすさも手伝って世間に浸透していったが、国土交通省などでは既に“禁句”にしているという。理由は一言で言えば、「あまりに具体的過ぎるから」。裏返して言えば、「法律の文言として盛り込めない」からだ。もっと“具体的”にいえば、消費者に「200年の寿命があると思っていた」と突っ込まれたときに説明できないことが理由だ。

 確かに、2008年11月28日に参議院で可決したのは「長期優良住宅の普及の促進に関する法律案」だ。「200年住宅」とはどこにも書かれていない。また、国土交通省のウェブサイトで「200年住宅」という言葉を検索すると、26件がヒットするものの、その多くが2007年度以前に公表された資料だ。最近の公表資料でヒットするものもあるが、それは大臣会見の際に、質問した記者が使っていたものだった。一方、「長期優良住宅」を検索すると、49件がヒット。「200年住宅」という言葉を封印し、「長期優良住宅」という言葉にシフトしたい国土交通省の思惑が見て取れる。

 しかし、メディアは、われわれを含めて今でも「200年住宅」というキーワードを使って記事を書いている。そう書いた方が読者にとってわかりやすいと考えるからだ。例えば、――200年住宅の普及促進の基本法となる「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」――といった具合だ。書籍などでも「200年住宅」をタイトルに入れたものは数多く出版されている。ちなみに検索サイトのYAHOO!JAPANで「200年住宅」は5990万件がヒット。「長期優良住宅」は277万件で20倍以上の開きがある。「長期優良住宅」はあまりに“普通”過ぎてキーワードになりにくい訴求力のない言葉なのである。

 国が「長期優良住宅」関連の施策を含む「住宅・建築物における省資源・省CO2対策の推進」に240億円もの予算を付けられたのも、「200年住宅」がキーワードとして訴求力があったからだ。むろん福田前首相の支持率アップを狙った政策的なキーワードとしての側面はあった。「200年住宅」というキーワードだけが一人歩きしてしまう危うさも確かにあるだろう。ただ、「具体的過ぎて困る」という、いかにも官僚的な発想で世間に浸透しているキーワードを“もみ消そう”とする動きには反対だ。「家を大切に使っていきましょう」という意識を国民に浸透させるためのキーワードとしては優れている。“目標”として存続させてもよいのではないか。