発光ダイオード(LED)を使った照明器具が続々と登場している。矢野経済研究所は、LED照明の市場規模が2013年には4130億円と、金額ベースで2008年の約10倍に達すると予測。有望なLED照明市場には、照明器具メーカーだけでなくLEDメーカーや海外メーカー、ベンチャー企業など、さまざまな企業が相次いで参入し、製品開発を競い合っている。

 LED照明の特徴として、「省エネ」「長寿命」「小型・軽量」を挙げることができる。白熱電球に比べて消費電力が約6分の1と小さい半面、寿命は20倍程度と長い。コンパクトで発熱量も少ないことから、従来の照明とは異なる使い方ができる。

 良いこと尽くしに思えるLED照明だが、ネックは価格の高さ。一般的な照明器具と比べ、現時点では3~5倍程度とまだ高価だ。

 だが、LED照明には、白熱電球や蛍光灯など、これまであった光源とは決定的な違いがある。それは「ランプが切れない」ということだ。

 LEDは半導体自体が発光する。そのため、白熱電球のようにフィラメントが切れて突然、点灯しなくなることはない。発光部分のLEDチップやチップを封入している樹脂などの素材が劣化し、光の透過率が低下して徐々に暗くなっていく。日本照明器具工業会では、全光束(光源から放射される全方向の明るさ)が初期全光束の70%に低下するまでの時間を、「LED照明の寿命」と定義している。

 製品カタログを見ると、LED照明の寿命はおおよそ4万時間と記載されている。1日10~11時間の点灯を想定すれば、約10年の寿命だ。ただし、LED照明の寿命は樹脂など周辺素材の寿命に依存しているので、劣化しにくい樹脂を使えば、LED照明の寿命も延びるはずだ。これまでにない高耐久の樹脂を開発する、あるいは樹脂以外の劣化しにくい素材を採用する――などに取り組めば、LED照明の寿命を10万時間、20万時間と、さらに延ばすことはできるのではないか。

 長期優良住宅、いわゆる200年住宅の普及が国を挙げて進められるなど、建築物の長寿命化のニーズは高まっている。それに伴い、建築物に付帯する建材や設備機器にも、メンテナンスの手間が低減できる工夫が求められている。

 LEDであれば、新築後、解体されるまで一度も交換する必要がない照明器具をつくれるかもしれない。建築物と同じだけの寿命を全うできる“永久照明”の開発だ。

 こうした夢物語は、LEDの専門家に「あり得ない」と一蹴(いっしゅう)されそうだが、これまでの照明デザインを覆すエポックをLED照明に期待したい。技術面やコスト面などハードルは高いと思うが、メーカーにはLED照明の長寿命化の可能性をどんどん探っていってほしい。