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岐阜県:東濃5市の東寄りか

 中間駅の誘致合戦がなく、比較的すんなりと設置場所が決まりそうなのが岐阜県だ。県内では元々、中津川市が特別委員会を発足させ、東濃地区への駅設置を求めていた。08年末に多治見、土岐、瑞浪、恵那を含めた東濃5市が知事に駅の設置について要請を行った。場所は同じく東濃地区としているので、県内の意見は絞られている。

東濃5市の位置関係
東濃5市の位置関係。東西約35kmに広がっている。最も西の多治見の中心から名古屋市の中心までは約25kmだ (地図提供:マピオン (c)Yahoo Japan)

 5市のうち最も西にあるのが多治見だ。同市の中心から名古屋市の中心までは約25kmで、電車で移動しても30分程度で着く。リニア東濃駅は停車本数がリニア名古屋駅より少なくなると予想される。リニア東濃駅を多治見に設けても、利用者は多くないかもしれない。

 最も東にある中津川は、名古屋から60km程度で特急電車でも50分かかる。県境なので県民の利便性という面からはベストな選択ではない。しかし、仮に在来線と接続し、リニア新幹線が大阪まで開通すれば、大阪と長野の往来が近くなるなど交通ネットワークは広がる。

 リニア東濃駅は、東西に広がる地区内の東寄りに設置されるのではないだろうか。

飯田-中津川間の20kmは短すぎるのか

 仮にリニア東濃駅が中津川にできると、リニア飯田駅との距離が20km程度と短くなる。高速性が損なわれることはないのだろうか。

 山梨リニア実験線では、わずか18.4kmの区間を時速500kmで走行している。581kmの世界記録も樹立している。軌道との摩擦に頼らず加減速するので、短距離・短時間のうちに最高速度に達する。停止から時速500kmまでは1分半程度だ。東海道新幹線であれば、最新車両のN700系でも線内の最高時速270kmに達するまで3分程度かかる。加減速の面からは、リニア新幹線はこまめに停車するのが得意ともいえる。飯田-中津川間が20kmしか離れていなくても、運行上の障害とはならなさそうだ。

 ただし、リニア新幹線は乗降に時間がかかる。実験線ではプラットホームと車両が1.5m離れており、乗降時に渡り通路を出し入れしている。また、超電導磁石の磁界を遮断するために、飛行場のボーディングブリッジのような設備も稼働させる必要がある。

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 国交省の追加調査指示は08年12月24日付。JR東海の松本正之社長は年末の営業日を知事らとの会談にあてた。1月下旬には、山梨県の横内正明知事が県内の駅について年内にも決まる見通しを示すなど、展開が加速している。リニア新幹線は地域の活性化に加え、景気対策としても早期の着工が期待されている。プロジェクトは意外に早く前進するかもしれない。