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山梨県:甲府など4地域が誘致を繰り広げる

 山梨県とリニア新幹線は、なにかと関係が深い。まず挙げられるのが、山梨リニア実験線だ。元副総理である故・金丸信氏の尽力で誘致が実現し、1997年に18.4kmの先行区間が完成した。行政が実験線の工事ために道路や土捨て場を整備するなど、県内一丸となってプロジェクトを支えてきた。また、自由民主党リニア特命委員会の会長である堀内光雄・衆議院議員を輩出しているのも山梨だ。堀内氏は富士急行の会長も務めている。

 駅の設置を巡っては08年以来、誘致合戦の様相を呈しつつある。2月上旬時点で4地域が名乗りを挙げている。山梨では、甲府盆地を含む西側の地域を国中(くになか)、御坂山以東の東京寄りを郡内(ぐんない)と呼ぶ。国中では、甲府など4市町(峡中)、笛吹など3市(峡東)、鰍沢など6町(峡南)の3地域、郡内では都留など12市町村が協議会を発足させている。

山梨の駅誘致活動
山梨の駅誘致活動。御坂山と大菩薩嶺の西側に当たる国中では3地域、東側に当たる郡内では1地域と、計4地域が名乗りを上げている (地図提供:マピオン (c)Yahoo Japan)
4地域の比較
地域 駅設置上のメリット
郡内
(都留市など)
・実験センターのプラットホームを生かせる
・観光地である富士山に近い

峡東
(笛吹市など)
・実験線トンネル工事の残土捨て場(21ha)を有効利用できる
・中央自動車道に近い
峡中
(甲府市など)
・人口が多い
・県内のほぼ中央に位置する
峡南
(市川三郷町など)
・JR身延線や中部横断自動車道(建設中)と交わる
 ※駅設置にはCルートであることが必要か

 4地域の特徴を東から順にみてみる。

 郡内には完成済みのリニア実験線があり、実験センターのプラットホームを有効活用できる。富士山や富士五湖などの観光地にも近い。

 峡東には、実験線のトンネル工事で発生した残土の捨て場がある。場所は笛吹市境川町藤垈(ふじぬた)、約21haとまとまった広さがあり、地元では駅への活用を想定している。甲府盆地を見下す眺望も訴求点という。

 峡中は県庁所在地の甲府を含み、多くの人口を抱えている。地勢的にも県内のほぼ中央に位置しており、駅を置くには“最大多数の最大幸福”を追求しやすい。

 峡南の強みは交通ネットワークだ。JR身延線や建設中の中部横断自動車道と交差するので、連携が期待できる。

 国中の3地域が地理的につながっていることから、事実上、国中と郡内の戦いになるだろう。人口などのバランスを考えると、国中が有利か。郡内では、富士急行線に東京駅からの通勤電車が乗り入れている。超高速とはいえないものの、国中よりも対東京の交通は恵まれている。

 甲府盆地のルートについて、ケンプラッツの12月19日付の記事では、中央自動車道や笛吹川の南側を通ると予想した。それらとの干渉を避けることで建設費が抑制でき、路線長も短くできるからだ。この場合、甲府南インター付近への設置で話がまとまるのではないだろうか。峡中と峡東の境に位置し、甲府市の中心からも数キロメートルだ。富士五湖方面への国道も通じている。

 利便性を考えれば、甲府市の中心に近付け、それこそJR甲府駅に接続するのが理想だ。しかし、近付けるほど路線長が長くなり、市街地の買収面積も増える。甲府以東の利用者が多い中央本線と完全に競合する点も問題視されるだろう。

 せめて、甲府に近いJR身延線の駅に接続できるようにするという考え方もある。しかし、現状の身延線は利用者がそれほど多くなく、路線を曲げてまで接続させる意義は大きくない。

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