青いベルトコンベアに黄色の満月――。思わずそんなイメージを抱いたのが、JR新宿駅に現れた“新型”エスカレーターだ。JR東日本は上りと下りのエスカレーターが並んで設置されている場合に、どちらが上りか下りかを瞬時に判断できるよう、手すりの青色ベルト部分に黄色の斑点を1m間隔に打って方向を示す実証試験を実施中だ。

JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)
JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)

 “新型”に遭遇したのは、2008年12月11日のこと。新宿での取材を終えて、編集部に帰ろうと駅構内を歩いていたら、青いベルトの上に黄色い斑点が描かれたエスカレーターが目に飛び込んできた。

 「なんですかね、このマルは」。黄色い斑点が次々と流れてくる様子はなんだかほほえましくもある。同行していた上司と斑点の意味について考えたところ、上司は「エスカレーターの方向を判別するため」、私は「(斑点部分を握れば立ち位置の間隔が広がるので)混雑の防止を図るため」。JR東日本に尋ねると、どうも上司が正解らしい。悔し紛れに詳細を調べることにした。

 実証試験を実施しているのは、JR新宿駅サザンテラス口の山手線と中央・総武線ホームにつながるエスカレーター。2007年11月から約1年にわたり第一次試験を行い、トラブルや苦情の件数が減少するなど効果が見られたため、2008年12月から第二次試験として、再びスタートしたという。JR東日本管内では、上野駅でも第一次試験を実施したが、第二次試験はやっていない。

 斑点はエスカレーターの事故防止対策の一環として導入。第一次試験段階では、ベルト部分に丸いシールを張ったり、「手すりにおつかまりください」などのメッセージを入れた。シールがはがれたり汚れが目立ったため、1カ月に1度のペースで取り替えるなど手間がかかった。第二次試験ではメッセージを入れずに、斑点を直接ベルトに印刷。耐久性を高めるために、コーティング剤を使用している。

 JR東日本によれば、第二次試験の実施期間は未定で、本格導入については利用者の反応などを見ながら検討していくという。エスカレーターの写真を撮るために、再び訪れたJR新宿駅サザンテラス口で、利用者にコメントを求めたところ「黄色のマルには気づきましたが、用途は分かりませんでした」(30代男性)、「(黄色のマルは)つかまる場所だと思って握っていました。違うんですか?」(40代男性)などさまざま。同社には青色と黄色のコントラストの強さから「遠目にも方向の判別がしやすくありがたい」といった声も寄せられているという。

 万人が納得する事故防止策の追求は容易ではなさそうだが、別の用途に結びつくなど副次的な効果も期待ができそうだ。“新型”エスカレーターの今後の展開が楽しみである。


エスカレーターの方向判別といえばLEDの電光掲示板がおなじみ。今後、ベルトの斑点に十分な効果が期待できれば、掲示板の設置手間や電気代などが不要となり経費削減にもつながりそうだ(写真:ケンプラッツ)。
エスカレーターの方向判別といえばLEDの電光掲示板がおなじみ。今後、ベルトの斑点に十分な効果が期待できれば、掲示板の設置手間や電気代などが不要となり、経費削減にもつながりそうだ(写真:ケンプラッツ)

JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)
JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)

JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)
JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)

JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)
JR新宿駅サザンテラス口の山手線ホームにつながるエスカレーター(写真:ケンプラッツ)